研究課題
本年度は、前年度よりおこなってきたオートファジーマーカー(LC3)と緑色蛍光タンパク(GFP)の融合タンパク(GFP-LC3)を発現するトランスジェニックマウスにおける歯の移動実験を継続した。その結果、歯の移動開始3、6時間後に歯根膜圧迫側は低酸素状態となっていたが、歯の移動開始6時間後までに、歯根膜圧迫側においてLC3が顕著に誘導されていた。歯の移動開始24時間後には、LC3が減少した一方でアポトーシス(TUNEL陽性細胞)の存在が最も顕著となった。さらに歯根周囲組織におけるオートファジーを誘導した因子についてより詳細に解析するため、ヒト歯根膜線維芽細胞株 (HPdLF) に対し、メカニカルストレス(種々の大きさの持続的伸展・圧縮力)、低酸素ストレス (約1 % pO2) の負荷を行い、LC3タンパク誘導の有無を免疫染色およびWestern blotting法により検索した。その結果、HPdLFにおいて、メカニカルストレスによるLC3の変化は確認できなかったが、低酸素ストレスはLC3を有意に増加させた。本年度の研究結果から、矯正学的な歯の移動は、歯根膜圧迫側を低酸素にすることでオートファジーを誘導する可能性がが示された。本研究課題は歯根膜におけるオートファジーの存在を初めて示した点で画期的であり、また歯根膜におけるオートファジー誘導因子を明らかに出来たことは、将来的に硝子化変性・歯根吸収や骨破壊のない効率的で安全な歯の移動法開発につながる基盤情報の端緒となると考えられた。
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