研究課題
平成27年度の研究実勢の概要は下記の通りである。【目的】本研究課題では野生型(WT)およびLOX-1欠損(KO)マウスを用いて、LPS誘導歯周炎モデルマウスを作製し、歯周病発症および進展に対するLOX-1の役割を解析する。一方、それぞれのマウスより分離した骨芽細胞(OB)および破骨細胞前駆細胞(OCpre)を用いて、LPS誘導骨破壊部位におけるLOX-1を介した詳細な発症メカニズムを明らかにする。【方法および結果】まず、辺縁性歯周炎モデル作製法として、Kimuraらの報告(Oral Diseases 2014)の方法に基づき、LOX-1 KOマウスおよび野生型マウスの下顎左側第一大臼歯の近心歯肉(口蓋側歯肉溝)にLPS試薬を投与し歯周炎病態モデルマウスの作製を試みた。しかしながら、本方法では歯周炎モデルの完成には至らず、今後さらなる改良が必要であった。そこで、LPSを頭蓋骨に投与するLPS誘導炎症性骨破壊モデル実験に切り替えて実験を続行した。LOX-1 KOマウスではRANKL発現上昇がWTマウスに比べ低下し、それと並行して骨吸収上昇も低下した。さらに、WT OBとWT OCpreの共存培養においてIL-1βとPGE2処理で大きく促進したOC形成は、LOX-1 KO OBとWT OCpreの共存培養で減少した。これと一致して、OBのIL-1βとPGE2処理またはLPSによるRANKL発現がWTに比べLOX-1 KO OBで低下した。これらは炎症部位でのRANKL発現がLOX-1に依存していることを示すと同時に、LOX-1依存性RANKL発現細胞の1つとして骨芽細胞が考えられた。【結論】炎症性骨破壊部位における骨芽細胞のRANKL発現はLOX-1に依存することが明らかとなった。本研究から、LOX-1が歯周炎による歯槽骨吸収に対して治療ターゲットになりうることが示唆された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
BONE
巻: 75 ページ: 170-182
10.1016/j.bone.2015.02.025.