研究課題/領域番号 |
26670897
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笹野 高嗣 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10125560)
|
研究分担者 |
佐藤 しづ子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60225274)
庄司 憲明 東北大学, 大学病院, 講師 (70250800)
飯久保 正弘 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (80302157)
菅原 俊二 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10241639)
市川 博之 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20193435)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 味覚障害 / 遺伝子解析 / 客観的診断 |
研究実績の概要 |
本研究ではうま味受容体候補であるT1R1、T1R3、mGluR1およびmGluR4の遺伝子発現に着目し、舌乳頭の擦過試料を用いた客観的味覚検査法の確立を目的とした。 先ず、舌乳頭の擦過試料に味細胞が存在することを味細胞に特異的に発現しているGustducinをマーカーとして免疫細胞化学染色法により検討した。次に、House Keeping Geneであるβ-actin、上記Gustducinおよびうま味受容体遺伝子の特異的プライマーを選定することにより擦過試料のリアルタイムPCR解析を行った。さらに、増幅したPCR産物のシーケンス解析を行い、ターゲット遺伝子の増幅を確認した。その結果、①舌乳頭擦過試料に味細胞が含まれること、および、②リアルタイムPCR法を用いたシーケンス解析によりヒト由来のβ-actin、Gustducinおよびうま味受容体遺伝子が特異的に増幅されることが示された。以上の結果より、舌乳頭擦過試料のうま味受容体遺伝子発現解析により客観的味覚検査法の臨床応用の可能性が示唆された。 今後は、本研究の臨床応用に向けた基礎的資料を得るために、うま味刺激による受容体遺伝子発現の変化について評価する予定である。また、うま味受容体の遺伝子解析が可能になったことから、本研究で得られた手法を用いて、同じGタンパク共役型受容体である甘味についても受容体遺伝子解析の道が開けたと考えている。甘味とうま味はヒトにとって美味しく味わうために重要な因子であり、おいしき食べて活き活き生きる健康寿命の伸展に役立つ可能性を秘めている。更に研究を発展すべく精進したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究から、舌乳頭擦過試料に含まれる味覚受容体遺伝子発現を解析することにより、客観的味覚検査法の臨床応用の可能性が示唆された。この方法は、従来の味覚検査(患者に味覚刺激を与えて患者の反応を調べる主観的検査)とは全く異なり、客観的、定量的かつ正確な味覚診断として期待できる。この方法は、コミュニケ-ションがとれない患者を対象とすることも可能であり、世界初の挑戦的アイデアの実現である。この結果は、幾つかの国際誌で既に公表することもできた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究から、舌乳頭擦過試料に含まれる味覚受容体遺伝子発現を解析することにより、客観的味覚検査法の臨床応用の可能性が示唆された。今後は、本研究の臨床応用に向け、患者群と健常者群のcutoff pointを見出し、客観的、定量的かつ正確な味覚診断として確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は舌味蕾の味覚受容体遺伝子の解析による新たな味覚診断法の開発である。研究は順調に進み、5つの基本味(甘・酸・塩・苦・うま味)になかでうま味について研究が終了し国際誌に掲載されたところである。現在、臨床応用の中で、がん患者のうま味障害に関する遺伝子解析を進めているところであり、もう少しで臨床応用が完遂する可能性がある。そのためには費用が必要であるが、幸い、直接経費は残存しており、期間延長により研究の完遂を目指す。
|
次年度使用額の使用計画 |
固形がん患者に対して、我々が既に開発臨床応用しているうま味感受性試験を施し、本研究課題である舌味蕾の味覚受容体遺伝子の解析結果と照合し、遺伝子解析による客観的うま味検査法の臨床応用を目指す。
|