研究課題/領域番号 |
26670898
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 温 東北大学, 大学病院, 助教 (50333828)
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研究分担者 |
木野 康志 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00272005)
千葉 美麗 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (10236820)
清水 良央 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30302152)
鈴木 敏彦 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (70261518)
篠田 壽 東北大学, 歯学研究科(研究院), 名誉教授 (80014025)
岡 壽崇 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (70339745)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低線量長期被曝 / ESR計測 |
研究実績の概要 |
本年度は、歯を用いてESR測定を行うための条件設定を行った。歯のエナメル質を分離し、粒径を425μmから1400μmに調製し、それらのサンプルを石英チューブに150mg程度充填し、ESRシグナルの測定を行った。文献的に、実験照射における最低被曝量は200mGy程度とされている。今回はその精度の向上を目的として、ESRシグナル解析のためのプログラムをアップデートしデータ解析を行った。もっとも難渋するプロセスはESRシグナルスペクトルから、目的とする炭酸ラジカルを抽出するステップである。アップデートされた抽出プログラムにより解析した結果、エナメル試料において50mGyのガンマ線実験照射に比較して150mGyの照射で有意な炭酸ラジカルの増大を認めた。実験照射を繰り返し、500mGy程度までの検量線を求めたところ、多変量解析において有意な相関を認めたことから、求めた回帰式から実際に長期被曝させたサンプルのESRシグナル解析を行う予定である。 併行して、福島県に留置する場所選定のために積算線量計を用いて数地点の計測を行った。サンプル留置を想定としたアクリルボックスに積算線量計を入れて、高線量地域に数十時間放置し、回収して年間の被曝量を求めた。その結果、年間被曝量40mGy、100mGy、150mGyの地点を求めることができた。今後は、本年度で検討したエナメルサンプルを、適宜アクリルあるいは鉛による遮蔽を行い目的とする年間被被曝量を調整した状態で、サンプルの設置を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サンプル調整のために必要な歯の調達は比較的速やかに行えたが、ESR測定のためのエナメル調整に事前の見積もりより時間がかかった。目的とする炭酸ラジカルを精度よく抽出するために解析プログラムのアップデートの他に、メカノラジカルの発生ならびに繰り返し測定による誤差を最小限にすることが必須であるが、その条件設定を行うまでに時間を要した。当初はサンプル処理のスループットを上げるために、歯を丸ごと用いてESR測定を行ったが有機ラジカルのバイアスが強く、さらにアップデートされた解析プログラムにおいてもうまくフィッティングせず断念した。続いて有機質含有の少ないエナメルのみを抽出しESRシグナル測定を行ってようやくフィッティングできたが、エナメル抽出処理の際の物理的衝撃によるメカノラジカルの発生がどの程度かを検討する必要があった。結局、歯冠部を分割し、注水下で象牙質を物理的に分離し、ハンマー及びニッパーにより抽出したエナメルを砕き、目的の粒度(425μm~1400μm)に調製することで比較的再現性の良好なサンプルを得ることができた。その後実験的照射を行い、500mGyまでの照射で炭酸シグナルの生長を測定したが、目的とする線量が非常に小さい領域での測定であることから、ESR測定時の環境整備、測定条件においても従来の方法より改善する必要があり、それらのことが研究の進捗を遅らせた原因である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度においては、測定条件の設定がなされていることから、ロードマップ通りの進捗を見込んでいる。すなわち、実験照射時における検量線の測定と、高線量地域でのサンプル留置を行い、定期的に回収しESRシグナルの生長を測定することである。その際、新たに明らかになった問題点としては、サンプル留置時、1か月に1度程度線量記録ならびに線量計の電池交換のため現地に立ち入る必要があるが、留置する場所の特性から冬期は立ち入り自体が困難になることである。そのため、立ち入りできなくなる時期に入る前にサンプルの回収を行って、再び立ち入ることができるような状況になってから、継続して留置する予定である。したがって、27年度で予定していたすべてのサンプル留置期間を達成することは難しいが、それまでにESRシグナルの生長を認めることで実質的には本課題の達成とすることができる。もし、27年度中にESRシグナルの生長を認めない場合でも、それまでに繰り返し行っている回収とESR測定のみ残す状況であることからその後は容易に目的を達成できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ESR測定のための条件決めに時間がかかったことから、前年度予定していた高線量地域での長期サンプル留置実験が遅れたことに起因する。本年度では測定条件が整ったことから、前年度予定していた高線量地域でのサンプル留置を開始し、併せて、予定通り実験的照射による検量線の確定を目指す。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度開始予定だった高線量地域でのサンプル留置を開始する。前年度未使用だった研究費は当該サンプル留置分のみであることから本年度分を含めて適切に使用できる。
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