研究課題
本年度は、得られた測定条件を基に調整した歯のエナメル質試料を、福島県の特定の設置点に留置し、経時的なESRシグナルの生長の測定を行った。歯の試料は、昨年度の検討から、歯からエナメル質分離を行う際は技工用エンジンによる物理的分離ののち、プレスによる破砕とニッパーでの切断により粒径を425μmmから1000μmmに調整した。歯ごとのESRバックグラウンドを測定し、バイアスがないことを確認したのち、それらのサンプルをESR測定のための石英チューブにそれぞれ約100mgずつ填入し以後の実験に用いた。試料の留置場所については、計測地点にあらかじめ積算線量計を用いて数十時間測定し妥当な地点を選択した。各測定点の例数は7、空間線量率は低線量順にそれぞれ5 mGy/y, 100mGy/y, 150mGy/y程度とした。対照として当教室の実験室(約1mGy/y)に留置した。第一クールとして6カ月被曝させたのち試料を回収し、昨年度検討した測定条件のもとESR測定を行った。6か月の被曝によるそれぞれの計測点における積算線量はそれぞれ3.00mGy, 42.5mGy, 78.1mGyであった。ESR測定の結果、最も高線量地域に留置したサンプルにおいては被曝前のベースと比較して炭酸シグナルの有意な上昇を認めた。そのほかの地点においても空間線量率に比例して炭酸シグナルの上昇傾向を認めた。一方で別途エナメル質にコバルト60のγ線を照射して得られた検量線を用いて、本実験で得られた測定値を回帰するとそれぞれ-4.45mGy,25.9mGy,76.5mGyとなり、本研究の目的である、歯を用いた、福島第一事故による環境下における個体被ばく量の測定は現時点では積算線量およそ80mGy以上で測定できるものと考えられた。将来的には2クール、3クールと行い、より低線量環境下での本方法の有用性を検討する予定である。
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Scientific Reports
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