| 研究実績の概要 |
高齢者の嚥下機能と顎顔面骨格との関係に関する研究は見当たらない．そこで，高齢者を被験者として，顎顔面骨格を頭部エックス線規格写真（セファロ）により計測し，嚥下機能等との関係を分析し，嚥下機能に影響する要因を明らかにした．
平成26年度に健康で自立した高齢者を対象に被験者ボランティアを募集し，本研究の趣旨に賛同し協力の得られた21名（当初）を対象に口腔機能の計測ならびに口腔ケア指導を実施した．平成27年度は，そのうち19名（平均年齢78歳，男性：6名，女性：13名）を対象に右側面セファロを撮影し，反復唾液のみテスト（RSST），最大舌圧，オーラルディアドコキネシス（/pa/，/ta/，/ka/発音速度）を計測した．
RSSTと最大舌圧，/pa/，/ta/，/ka/の計測値との相関分析では，口唇閉鎖と関連する単音節/pa/が中程度の相関があり，舌運動/ta/，/ka/より口唇の巧緻性が嚥下機能に関連が強いことが示唆された．この成果を平成28年度第13回日本口腔ケア学会（於千葉）において「高齢者の舌圧と嚥下機能およびオーラルディアドコキネシスとの関連」と題して口演発表した。
さらに，セファロ分析ソフトWinceph を用いて顎顔面骨格の角度計測を行い，RSST，最大舌圧，単音節/pa/，/ta/，/ka/の発音速度およびセファロの角度計測値との単相関分析，並びにRSSTを目的変数とする重回帰分析を行った．その結果，RSSTと有意な相関はセファロ分析のConvexity，A-B plane angle, ANBおよびRamus plane angleで，最大舌圧，/pa/，/ta/，/ka/の発音速度との相関は認めなかった．以上より，下顎骨の位置や大きさが嚥下機能に影響をおよぼすことが示唆された．この成果について，第29回バイオメディカル・ファジィ・システム学会年次大会にて口演発表した．
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