研究課題/領域番号 |
26670910
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
矢野 明 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究部長 (50312286)
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研究分担者 |
八代田 陽子 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (60360658)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Candida albicans / Fatty acids / Stearidonic acids / Ricinoleic acids / Amphotericin B / Biofilm |
研究実績の概要 |
近年の高齢者=易感染宿主の増加に伴い、口腔粘膜疾患の原因微生物として真菌、特にカンジダが注目され始めている。口からの食事は高齢者の健康維持に不可欠であるが、日常的に摂取する食品中にもカンジダ等の真菌の生物活性を抑制する成分が存在し、直接あるいは間接的に口腔保健に貢献していること、さらにそれら食品成分が抗真菌剤と相互作用し、相乗的に真菌を抑制することが明らかとなってきた。 抗菌成分として有名なカテキンの真菌への作用を検討したが、Candida albicans SC5314株に対してはほとんど抗菌性を示さないことが判明した。一方、我々は雑穀(アワ・キビ等)の抽出物中に抗菌性を見出し、有効成分としてαリノレン酸等の多価不飽和脂肪酸を同定した。抗真菌活性の評価法として、カンジダの病原性菌糸形成を指標とし、各種脂肪酸を評価したところ、αリノレン酸やEPAなどの食品中にも含まれる多価不飽和脂肪酸が、強く菌糸形成を阻害することを確認した(雑穀の脂溶性成分を解析する過程で、その黄色素がキサントフィル(ルテイン、およびゼアキサンチン)であることを見出し、これについては学会発表、論文投稿を行っている)。 続いて脂肪酸の抗真菌活性について、増殖抑制活性、バイオフィルム形成阻害活性、形成済みバイオフィルムへの障害活性について、各種脂肪酸の評価を行った結果、不飽和結合が4つ導入されたテアリドン酸に、強い抗菌活性を見出した。リシノール酸や中鎖脂肪酸にも高真菌活性があるが、ステアリドン酸のみが抗真菌剤AMPH-Bと相乗効果を示すことが明らかとなり、その作用メカニズムを明らかにすべくケミカルゲノミクス解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗菌活性を持つ食品成分として、雑穀等に含まれる複数の脂肪酸を同定。そこで、各種脂肪酸について解析することで、浮遊細胞、菌糸形成、バイオフィルム形成、成熟バイオフィルムへの、抗真菌活性データを得ることができた。もっとも有望な抗真菌脂肪酸としてステアリドン酸が特定でき、代表的抗真菌剤AMPH-Bと相乗的に作用することを明らかとした。ほぼ期待通りの結果を出せているため、論文としてまとめる予定であるが、執筆が遅れている。一方で、雑穀の抗菌成分を特定する過程で、脂溶性黄色素がキサントフィルであることを見出したため、これも論文として投稿しているが、未だ受理に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
真菌のモデル出芽酵母の欠損株ライブラリーを用い、各種脂肪酸の抗真菌活性について、ケミカル・ゲノミクス解析を実施する。脂肪酸ごとに異なるターゲット遺伝子を予測し、各欠損株を用いて脂肪酸の感受性を評価することで、脂肪酸の作用部位の同定を行う。 さらに、出芽酵母の遺伝子から予測されるカンジダ・アルビカンスのターゲット遺伝子を欠損させ、増殖、菌糸形成、バイオフィルム形成、バイオフィルム成熟等の各表現系を確認するとともに、各種阻害剤による脂肪酸の作用解析、脂肪酸存在化での欠損株の解析を行うことで、ステアリドン酸特有の作用機序や、AMPH-Bとの相乗作用についてのメカニズムの推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆が遅れており、投稿費用などを次年度に繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
早急に論文を完成させ、投稿する。
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