研究課題/領域番号 |
26670911
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
三浦 宏子 国立保健医療科学院, その他部局等, 部長 (10183625)
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研究分担者 |
川西 克弥 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (10438377)
原 修一 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (40435194)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域歯科保健 / 高齢者 / 口腔機能 / 構音 / ICT |
研究実績の概要 |
介護施設に入所している要介護高齢者の構音機能を評価するために、デジタル音声サンプルを採取して、音響学的分析を行った。音声採取にあたっては、61名の被験者の協力を得た。被験者に基本フレーズを発音してもらい、録音したデジタル音声について波形分析を行い、主として、基本周期変動係数(PPQ)、振幅変動指数(APQ)、および雑音成分(MFR)等の分析を行った。また、併せて妥当性・信頼性が確認されている評価スケールであるSF-8を用いて、健康に関連するQOL(健康関連QOL)について評価を行い、波形分析から得られたパラメータ評価結果との関連性を分析した。その結果、健康関連QOLを構成する代表的な下位項目である「全体的健康感」得点の低位群では、PPQ,APQ、NHRのすべて波形評価項目において、「全体的健康観」得点の高位群と比較して有意に高い値を示した(p<0.05)。さらに、代表的な交絡要因である年齢の影響を除外するために、年齢を共変量とした共分散分析を行った結果においても、「全体的健康感」得点の低下はPPQ,APQ、NHR各値の増加と有意な関連性を示し(p<0.05)、健康関連QOLの低下に伴い、音声の質の低下が認められた。 これらの結果より、音声デジタルデータを活用することにより、構音等の口腔機能の良否だけでなく、全身の健康状態を評価できる可能性が示唆された。また、タブレット端末やスマートフォンを用いることにより、音声デジタルデータの収集は比較的容易に行うことができるため、地域在住高齢者に対する機能評価等に活用できるものと考えられた。昨年度、分析を行ったオーラル・ディアドコキネシスに加え、声の揺らぎに関連性を有する波形データについて評価を行うことにより、さらに包括的な評価ができるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者の口腔機能と音声評価についてのフィールド調査については、当初の計画どおり順調に推移しており、当該年度については要介護高齢者を対象とした詳細な音声波形分析を行うことができた。その結果として、多様な身体状況を呈する高齢期の音声・構音機能に関して、包括的なデータを収集することができた。その一方、地域在住高齢者の構音機能を簡易評価するためのアプリケーションの開発は、研究費不足のため、研究の進展が遅れており、現時点でアプリケーションの完成には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査研究の結果、高齢期の口腔機能について音声データを用いる際に有用な基準データの提示が可能となりつつあるので、最終年度の平成28年度では、オーラル・ディアドコキネシスなどの測定パラメータについて、地域在住高齢者の基準値を提示していきたい。また、音声デジタルデータを用いた口腔機能評価アプリケーションの開発については、資金面でも何とか見通しがついてきたので、コストパフォーマンスを考慮したうえで、開発作業のスピードを上げ、平成28年度の前半での完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
口腔機能評価アプリケーションのプログラミングにかかる費用見積もりの結果、平成27年度の研究費の一部を繰り越し、平成28年度の研究費と併せて、一括的に開発を進めることにしたため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの繰越額と平成28年度の配分額を合算することによって、口腔機能評価アプリケーションの開発を進めるものとする。
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