研究課題/領域番号 |
26670915
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 陵子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10279854)
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研究分担者 |
真田 弘美 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50143920)
大江 真琴 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60389939)
小見山 智恵子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60581634)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 臨床看護学 / 看護技術 / 輸液療法 / 超音波検査 |
研究実績の概要 |
本研究は末梢静脈点滴実施中の血管外漏出を含む点滴トラブルの実態を詳細に観察し、トラブルの原因を明らかにすることを目的とした。以下の2つの研究を進めている。 「研究1:血管外漏出の実態調査と要因分析」として、都内大学病院26部署において2か月間の実態調査を実施し、5,316カテーテルを前向きに追跡したところ、トラブルによる中途抜去が18.8%であった。‘血管周辺組織への漏れ’が7.8%、‘痛みがある’が3.6%であった。トラブルと関連している患者背景要因としては、低栄養の可能性(BMI<18,Alb<3.5g/dL,Hb≦11g/dL)、高齢(65歳以上)、性別(女性)が示唆された。現在、薬剤との関連を分析中である。 「研究2:血管外漏出の原因分析」では、可視化できない皮下(皮下組織や血管)をエコー、皮膚表面温度をサーモグラフィー、留置技術の動画撮影などの非侵襲的な測定方法を用いて観察する実態調査を実施した。成人内科病棟にて6か月間の前向き調査で、留置針刺入時、および抜去時の観察を行った。その結果、抜去時の観察ができた200件のうち、カテーテルが血管外に逸脱しているものはなかった。エコー画像評価方法を確立し、血管内腔に血栓が形成されることや、皮下組織に浮腫様の変化があると、カテーテル抜去に至り、治療が中断される場合が多く、さらにその変化は留置針穿刺回数が2回以上だと起こしやすいことが示された。また、点滴漏れ症状あり群の血管径は、なし群と比べて有意に小さく、カテーテル径の3.3倍を目安に血管選択すると良いことが示された。現在、抜去したカテーテル先端の分析による分子生物学的アプローチも取り入れたさらなる原因の探索、サーモグラフィーによる皮膚温分析、動画解析による留置針刺入技術検討などを進めている。結果の一部を原著論文2本、国内学会にて3件発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究者が所属する社会連携講座アドバンストナーシングテクノロジーは、病院内に開設されており、診療科、看護部、大学看護学専攻と協働して研究を推進する環境がある。そのため計画した調査は6か月間、ほぼ毎日部署に測定機器を持ち込み、ベッドサイドで観察するプロトコルであったが実現でき、当初の計画どおりに概ね進行できている。ただし、点滴トラブルは予測できず、抜去時の観察ができない脱落数が多くなったことが限界としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
計画に準じ、今年度は昨年度までに得られたデータの解析を進める。具体的には詳細なカルテ調査により、輸液投与状況と薬剤の内容、投与方法などと血管外漏出を含むトラブルとの関連を明らかにする。また超音波検査技師のスーパーバイズを受けながら、エコー画像の分析を進め、症状との関連などから、血管外漏出を含めたトラブルの原因解明の糸口を探索していく。動画解析による留置針刺入技術検討は、データ分析にとどまらず、今後の看護技術の提案につながるような具体的なマニュアル作成への着手を目指している。 それらの分析結果により、学会発表、論文作成を進め、血管外漏出を含む点滴トラブルの予防のための、看護技術開発のエビデンスとして成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実態調査の観察項目に血管走行を含め、その観察装置として非接触型静脈可視化装置(株式会社テクノメディカ)の購入を計画していた。しかし、本研究において得るべき情報から削除した。熱画像計測装置の購入にあてることになったが、年度後半になり、想定よりも費用がかからなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
学会への参加(海外を含む)、そのための旅費などの使用を計画している。
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