本研究では主として疾患を有している人のストレス対処力について、その現状とその後の向上策・向上プログラムにつなげるための形成的調査研究を行うことを目的とした。 主に慢性腎疾患患者並びにHIV/AIDS患者、脳血管疾患患者におけるSOCの状況、また、生理的機能、ストレス度との関連性についての基礎的検討を通じて明らかにすることを行った。 慢性腎疾患患者のSOCについては全体として低い傾向がみられておりその中でもSOCが低い人では療養行動に困難を感じている人が多くみられた。他方でサポートネットワークはSOCの高さとも関連を見せるなど、SOCの向上に向けての糸口について明らかにすることができた。 HIV/AIDS患者においてはこちらも極めて低いSOCレベルにあることが明らかになった。そのなかで、SOCが低いことによりCD4細胞数やウィルス量とも微弱に関連することもわかり、また、内服アドヒアランスとも関連しており、アドヒアランスを通じて健康に関与する可能性が考えられた。また、物質依存との関係も示唆された。その一方で、地域、および経済状況によってSOCに差があることがわかり、SOC向上に向けて、地域性を加味すること、経済的に制約がある者に対しSOC向上を視野に入れた支援の方法について検討していくことが必要であることが示唆された。 脳血管疾患患者の場合は、「病いとの向き合い方」とsense of coherence(以下SOC)及びSelf-Rated Health(以下SRH)との関連を明らかにする。分析の結果、ポジティブな向き合い方がSOCの向上、SRHの向上につながることが明らかになった。 他方、生理的機能との関連について、特に副交感神経系の活性との相関が極めて高いことが示され、介入プログラムの中にはリラクゼーションや自律訓練法に関する手法を盛り込むことが重要である可能性が示唆された。
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