本研究の目的は、災害発生直後から1か月後までの災害急性期および亜急性期に、被災施設の透析患者を一時的に受け入れて透析治療を実施する支援透析において必要な患者情報および透析治療に必要な情報を明らかにすること、および治療に必要なデータを自ら支援先に提示できるスマートフォンを利用したアプリを開発・運用することである。このことは、高齢者や認知症患者など自分の治療条件を説明できない患者が本アプリケーションを支援透析先に提示するだけで迅速な透析治療を継続して受けることが期待できる。方法は、無作為抽出した500の透析施設に対して①支援透析の経験の有無、②災害急性期/亜急性期に被災施設から支援透析施設へ提供された患者情報と透析治療条件、③災害急性期/亜急性期に支援透析を実施する際に必要な患者情報と透析治療条件およびその必要度を調査した。また、支援透析の経験の有/無を比較群として災害急性期/亜急性期の患者情報と透析治療条件の必要度の比較分析を行った。結果、情報の必要度の平均点が高い項目として災害急性期では「患者氏名」、「感染症の有無」、「ドライウェイト」、「抗凝固薬」、「ブラッドアクセスの種類」、「ダイアライザーの名称」の6項目が抽出された。災害亜急性期では、急性期の6項目に加え「定期注射薬の種類」、「服薬情報」、「血液流量」、「穿刺部位」の4項目が新たに抽出された。 また、支援透析の経験の有/無を比較群とした患者情報と透析治療条件の必要度の分析では、災害急性期において「透析時間」、「定期注射薬の種類」、「血液流量」、「透析液流量」、「設定除水速度」の5項目で支援透析の経験がある施設のスコアが有意に高かった。この結果を元にandroidアプリを制作し、40~60歳代の透析患者10名を対象に3か月間操作性、有用性を確認し良好な反応を得た。今後、iOS用ソフトの制作を視野に入れ改良を行う。
|