本研究は、行政機関の活動報告書等から遺体が遺族にどのように引き渡されたのか現状を把握し、遺族および関係者へのインタビューを行い、遺体が遺族に引き渡される際、遺族にどのような支援が必要か明らかにし、遺族の災害による死別・喪失の悲嘆を軽減するための遺族への支援を示唆することを目的に実施した。 研究期間を通して実施した成果は次の通りである。(1) 災害時の遺体に関する国内の研究論文の文献調査では、災害時は平時に比べ遺体に関わる専門職や非専門職の関係者が増えることが確認できた。(2) 東日本大震災の被災地で調査協力が得られた遺族6人、地方自治体職員9名、警察官5人に対して、半構造化面接法によりインタビュー調査を実施した。インタビューでは、遺体が遺族に引き渡された時の状況を中心に聞き取り、質的データ解析ソフトウェア(NVivo10 日本語版)を使用し内容を分析した。遺体が遺族に引き渡された時のカテゴリーとして、遺族からは悲嘆と安堵、地方自治体職員からは公務優先規程に従い遂行される業務と遺族対応へのジレンマ、警察官からは正義感が確認できた。(3)災害時の遺族支援では、遺体を早期に確認し適切に処置すること、遺体に関わる場所の環境整備、遺族と遺体との別れの時間を十分確保することが重要である。(4)調査結果報告書を作成し関係者に配布した。 今後は本研究の結果を活かし災害時のみならず平時における死別に関する調査研究へと発展させたい。
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