本研究は,がん患者の治療選択における共有決定度(shared decision making)に影響する要因を明らかにすることである。特に,初期診断時での治療選択の局面において,患者が治療を選択し決定するまでの間に,看護師から受けたと認識した看護支援の視点から明らかにすることである。研究の第一段階は,がん患者の治療選択における看護師の意思決定支援尺度原案の内容妥当性の検討であり,第二段階は,がん患者の治療選択における看護師の意思決定支援尺度原案の信頼性および妥当性の検討である。 本年度は,この第二段階について実施した。対象が解析できるまでの人数に満たず,信頼性および妥当性の検討までには至らなかった。しかし,外来通院で検査を施行し,医師から患者に診断が告げられるインフォームドコンセント時には,看護師の同席が必ずしもあるとは限らず,また,患者や家族が看護師の同席や看護師からの支援に対する関心や期待が低い傾向にあることが示唆された。さらに,「患者が,初めて病気と診断されてから治療方法を決めるまでの間に,看護師から受けたと思う治療選択に関する支援」についての程度を示すVASにおいては,0点や回答がなく,看護師からの支援の認識が低い可能性が考えられた。 これらのことから,患者が外来で治療法を選択するまでの間や外来通院中は医師による支援を求めるものの,治療方法の決定時に看護師に支援を求めているとは限らない可能性が示唆された。 したがって,今後は,看護師に支援を求める対象者のニーズの把握や決め方について再考し,患者が納得できる意思決定に関する看護支援について追求していくことが重要課題と考える。
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