研究課題/領域番号 |
26670954
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
長崎 ひとみ 山梨大学, 総合研究部, 助教 (00436966)
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研究分担者 |
中村 美知子 山梨大学, 総合研究部, 医学研究員 (80227941)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 頭頸部がん / 放射線療法 / 化学療法 / 食生活指導 / 臨床看護師 |
研究実績の概要 |
【目的】頭頸部がんにより化学療法,放射線療法を受ける患者の自覚症状の変化に伴う食事・栄養摂取状態の特徴を明らかにし,患者の各治療過程に伴う食事・栄養摂取状態低下を最小限とする治療過程別の摂取しやすい食品・調理法の工夫等の看護師による食生活指導ガイドラインを作成し,頭頸部がん患者独自の食生活指導ガイドラインの活用を提言する。 【研究成果の概要】放射線療法を受ける患者(以下,放射線療法群)13名,化学療法を受ける患者(以下,化学療法群)10名の自覚症状,血液生化学的検査値,食事・栄養摂取状態の調査結果から各群の特徴を分析した。今年度は食生活指導内容について明らかにするために,更に治療中に血清Alb値が3.5g/dlまで低下した患者に焦点を当て,身体状態と食事・栄養摂取状態の関係の分析を行った。 放射線療法群は,治療終了時に口内乾燥,口内痛,咽頭痛,噛みづらさが有意に高値となり,血清Albが顕著に低下した。エネルギー摂取量は1756.8±182.0kcalから治療終了時には1146.8±385.7kcalまで低下した。治療中に血清Alb値が3.5g/dl以下に低下した患者7名は,治療終了時に口内乾燥が強くエネルギー摂取量は1034.2±446.0kcalと低値であった。この時期の血清Alb値と栄養摂取量に有意な相関関係はなかった。「噛みづらい」と魚介類,卵類等,「飲み込みづらい」と魚介類,肉類,卵類等摂取量に有意な強い負相関があった(r=-0.96~-0.99,P<0.05)。 化学療法群は,治療中に下痢,倦怠感,食欲低下が強く,エネルギー摂取量は1696.9±259.3kcalから治療中1136.4±368.2kcalまで低下した。治療中に血清Alb値が3.5g/dl以下に低下した者は3名であり,食欲低下が特に強くエネルギー摂取量は823.9±398.9kcalで更に低値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度は,調査結果から放射線療法および化学療法中の患者の身体状態,食事・栄養摂取状態の特徴を分析しまとめた。その後,患者の食生活改善のために看護師が患者に行う食生活指導内容について明らかにするために,治療中に血清Alb値が3.5g/dlまで低下した患者に焦点を絞り,身体状態と食事・栄養摂取状態の関係の分析を行った。その結果から,頭頸部がん患者独自の臨床看護師による食生活指導ガイドライン(案)を作成し,臨床で活用できるかたちにする予定であるが,食生活ガイドラインの案の作成には至っておらず,引き続き分析を続ける必要があるため,達成度は「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に引き続き化学療法,放射線療法患者の食生活の実態の分析,食生活指導ガイドラインの提言を行う。 1.化学療法・放射線療法患者の食生活の実態の分析:治療中から治療中に血清Alb3.5g/dl以下にまで低下した放射線療法群7名,化学療法群3名に焦点を当て,健康状態低下時の食事・栄養摂取状態,自覚症状との関係について分析した結果から,患者の健康状態,食生活を改善するための食事指導内容について検討する。 2.頭頸部がん患者の食生活指導ガイドライン作成手順1)放射線・化学療法中患者の食事・栄養摂取量の実態の分析結果から,治療別患者の食生活指導に必要な項目を抽出する。治療別食生活指導への提言は,摂取しやすい食品,調理法,味・食物特性,食事・栄養摂取量,必要量等で構成する。2)本結果をもとに,既存のガイドラインであるChemotherapy and Biotherapy Guidelines and Recommendations for Practice(Oncology Nursing Society,2005),放射線治療計画ガイドライン(日本放射線腫瘍学会,2012),がんよろず相談Q&A第3集抗がん剤治療・放射線治療と食事編(がんの社会学に関する合同研究班,2007)等を参考にし,看護師による頭頸部がん患者の治療過程別食生活指導ガイドライン(案)を作成する。3)「頭頸部がん患者の治療別食生活指導ガイドライン」(案)を患者,臨床看護師,医師,管理栄養士に示し,臨床で活用できるかたちとし,全国の病院等に配布する。4)研究成果を論文にまとめ,日本看護科学学会,日本臨床栄養学会等の国内外の関連学会に学会誌投稿・発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は頭頸部がん患者の食生活の分析結果から,「頭頸部がん患者の治療別食生活指導ガイドライン」を作成し,臨床で活用できるかたちにすることを目指していたが,ガイドライン作成には至っておらず,印刷費等の作成費用等が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
「頭頸部がん患者の治療別食生活指導ガイドライン」の印刷費用に充てる。また,研究成果を関連学会(日本看護科学学会,日本臨床栄養学会)に投稿するための費用(英文校正等)が必要である。平成29年度は研究成果の一部を国外の学会(10th Asia Pacific Conference on Clinical Nutrition)で発表することを予定しており,そのための旅費として計上する予定である。
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