【目的】頭頸部がんにより化学療法,放射線療法を受ける患者の自覚症状の変化に伴う食事・栄養摂取状態の特徴を明らかにし,患者の各治療過程に伴う食事・栄養摂取状態低下を最小限とする治療過程別の摂取しやすい食品・調理法の工夫等の看護師による食生活指導ガイドラインを作成し,頭頸部がん患者独自の食生活指導ガイドラインの活用を提言する。 【研究成果の概要】放射線療法を受ける患者(以下,放射線療法群)13名,化学療法を受ける患者(以下,化学療法群)10名の自覚症状,血液生化学的検査値,食事・栄養摂取状態の調査結果から各群の特徴を分析した。放射線療法群は,「口内乾燥」,「咽頭痛」が有意に高値となり,穀類,肉類等の摂取量が有意に低下した。化学療法群は,「食欲不振」「倦怠感」が有意に高値となり,穀類,肉類,魚介類等の摂取量が低下した。両群ともたんぱく質摂取量,血清Alb値が有意に低下した。本結果に基づき食生活指導内容をより具現化するため今年度は食物特性に焦点を当て,患者の摂取量が低下しなかった食品群,低下した食品群の中でも摂取しやすかった食品・調理法についての聞き取り調査結果を分析した。 放射線療法中に摂取量が低下しなかった食品群(豆類,卵類,乳類)で,患者の摂取しやすかった食品は,豆腐,卵豆腐,茶碗蒸し,牛乳であり,摂取量が低下した食品群(穀類,肉類,野菜類)の中でも摂取しやすかったものは,粥,とろろかけご飯,豚バラ肉,野菜の煮物等の水分の多いものであった。化学療法群では,摂取量が低下しなかった食品群(豆類,乳類)では豆腐,プリン,アイスクリーム,摂取量が低下した食品群(穀類,肉類,魚介類)の中でも摂取しやすかったものは,菓子パン,焼鳥や魚の缶詰等の味付けの濃いものであった。 血清Alb値の維持・改善のために,これらの食品の選択・調理法の工夫により,たんぱく質摂取量を補うことが必要である。
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