研究課題/領域番号 |
26670955
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
谷口 珠実 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (10258981)
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研究分担者 |
中山 優季 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野 難病ケア看護プロジェクト, 副参事研究員 (00455396)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 骨盤底筋訓練 / 下部尿路障害 / 排便障害 / QOL / 骨盤底筋筋電図 / 排泄機能維持 |
研究実績の概要 |
本研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の排泄症状の実態を把握し、疾患の進行に伴う運動障害を見越して、骨盤底筋訓練を6ヶ月間行なうことで、排泄機能維持とQOLの向上が図れるかどうかを検討している。 ALSの患者数は少なく、在宅療養者を専門外来受診時にリクルートを行なっているが、研究参加者が少なく、さらに疾患の進行状況により6ヶ月間の骨盤底筋訓練期間中の脱落(途中中断者)も少なくない。疾患の進行状況は、運動機能の低下による歩行や移動の障害をはじめ、呼吸障害による呼吸器装着、摂食嚥下障害による胃ろうの造設などがあり、障害の悪化に伴い骨盤底筋訓練が中断される患者が複数確認された。 排泄障害について、調査初回時の疾患の進行状況により、排泄障害の程度も異なっていた。運動機能の低下が進行していても、骨盤底筋訓練が遂行できた患者では、骨盤底筋の筋電図が維持または筋収縮powerが増加する傾向を認めた。骨盤底筋訓練を行なうことで、蓄尿が容易になったと患者は自覚し、移動時や腹圧上昇時の尿失禁の改善につながることが示唆された。 しかし、全身の自動的運動障害のALS患者においては、骨盤底筋の筋力の収縮力は認められず、訓練後の変化も認められなかった。 排泄の状態以外にQOLについて調査を行なっているが、疾患が確定してから進行している経過中の患者の気持ちの変化が語られて明らかになったことで、この期間中の不安や心配に応じた看護ケアの必要性が明確になり、ケアへの示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象患者数が少ないことは予測していたが、外来でのリクルートにあたり、2つの問題が生じている。 1つは、筋萎縮性側索硬化症の確定診断のために、針筋電図を受けて疼痛が強く記憶された患者にとっては、筋電図での評価に対する拒否が強く示される。本研究では、針筋電ではなく、経肛門プローブを使用しているため疼痛はないという説明に至らず、リクルート最中の拒否も多い。そして、骨盤底筋群の筋力を評価する方法において、外陰部と肛門周囲が評価対象となっており、羞恥心を伴う検査となることが影響していると考えている。 2つ目の理由は、進行性の疾患でその進行スピードの見通しが正確にはつかめないことで、6ヶ月間の訓練期間を設けているが、進行が早く呼吸障害や摂食嚥下障害によりその治療を優先するため、本研究からの途中離脱となってしまうことである。
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今後の研究の推進方策 |
対象患者のリクルートを増やすことが課題である。当初の予測を大幅に下回る研究参加状況であるが、患者の自由意志の尊重と研究途中の中断についての倫理的配慮を尊守して実施する。参加者リクルートを行なう専門外来を一施設増やす。リクルートのための説明用紙にこれまでの成果を加えて、研究参加のメリットを紹介する文章を追加して、参加者を募る。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者のリクルートが進まず、研究参加者が十分には得られなかった。このため、研究参加者に対する研究謝金が発生しなかったので、次年度にもリクルートを続け、研究参加者への謝金を確保する。 研究対象者が不十分で分析が進められず、学会報告や論文投稿も次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究参加者への謝金。 学会報告のための出張旅費。 論文投稿のための諸費用。
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