手術後疼痛の強い肩関節疾患患者の疼痛・苦痛の軽減と治療促進を目指し、冷却管理基準のエビデンスを見い出すために、肩関節鏡視下術後の冷却療法(クライオセラピー)に最も有効と考えられる冷却温度と時間を明確にする目的で、平成29年より研究を開始した。冷却温度と時間は、先行研究等を基に5℃16時間、5℃24時間、10℃16時間、10℃24時間の4群での比較とし、収集データは、属性と、帰室時、術後2時間、術後6時間、術後12時間、術後16時間、術後24時間の体温、両肩関節深部温、左右両側の肩関節より10㎝下の上腕外側、腋窩、手掌中央部の皮膚温、6時間毎のVisual Analogue Scale(VAS)と知覚・痛覚定量分析装置による痛み度、CRP等とした。 当初、以前の対象患者の手術件数実績から考えて、約10ヶ月で研究終了する見通しであったが、対象患者の年間手術件数の減少により、平成30年3月末までに、目標の60~80症例(1群15~20症例)に対し、約半数の38症例(5℃16時間19例,5℃24時間14例,10℃16時間5例)しかデータ収集できなかった。そのため、未だデータ収集継続中で、分析が一部の群間でしかできず、比較件数も不足しており、最終結果・結論は出せない。 38症例の途中結果は以下の通りである。属性:平均年齢;55.8±16.7歳 性別;男性30名、女性8名 診断名;肩腱板断裂32名、肩関節脱臼5名、肩関節唇損傷1名 冷却温度:肩関節深部温では、5℃24時間の終了時以外の冷却中は患側と健側に有意差を認めたが、群間の比較では有意差を認めなかった。疼痛:VAS、痛み度共に群間の比較では有意差を認めなかったが、5℃24時間群において、麻酔時の神経叢ブロックの有無で、術後24時間、30時間、48時間に有意差を認めた。CRP:5℃の時間比較群間での比較で、術後1日目に有意差を認めた。
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