平成28年度は、子宮頸がんに特化したリスクコミュニケーションツールの洗練と介入プロトコールの洗練と位置付けた。平成27年度に課題として明確になった①検診のリスクに対する過剰反応の防止、②対面のコミュニケーションを要する対象の把握の2点について検討した。これに加えて、検診体験に苦痛が伴った場合に検診を継続受診することへの困難性への対応を検討した。 子宮がん体験者、子宮頸がん検診受診対象者、医療従事者に対するインフォーマルな意見聴取により、検診に伴う苦痛やリスクに対する情報提供にあっては、このことが実際的なメッセージとして伝わるように、根拠となるエビデンスをわかりやすく掲載することが改善点としてあげられた。検査時の苦痛に対しては、主観的な体験であり、客観的なデータで示されるものではないことから、苦痛を伴うことと、がんでないことあるいは早期のがんで発見されることのメリットを、読んで理解するだけでなく、メリットとデメリットを具体的に吟味する段階を設けることとし、秤の図柄の左右に、当事者にとってのメリットとデメリットを書き込むワークを加えることとした。がん検診に伴うデメリット情報に重きをおいて判断するのは、特性不安の高い集団、身近な人々にがん体験者やがんにより亡くなった人がいる場合と想定された。しかし、こうした経験が、がん検診の重要性を深く理解する経験ともいえることから、一概に阻害要因とはいえないことが指摘された。 これらの意見聴取や研究結果から、リスクコミュニケーションツールは、ワークシートを含む形式に改善し、介入においては、スクリーニングとして、身近ながん体験の有無とイメージ、特性不安を把握して、対面支援を含む群とそうでない群に分けたプロトコールを完成した。
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