本研究の目的は、成人移行期にある小児慢性疾患患者のヘルスリテラシーを高める要因を明らかにすることである。前年度までに明らかとなった小児慢性疾患患者のヘルスリテラシーに関連する要因が、小児慢性疾患患者特有の結果であるかどうかを検証するためのデータを得ることを目的として今年度の研究を実施した。健康な対象者のデータを得るために、大学生と高校生を対象に質問紙調査を実施し、2017年度に116名の大学生と321名の高校生から回答を得た。 大学生のヘルスリテラシーの特徴は、相互作用的ヘルスリテラシーと批判的ヘルスリテラシーが低く、先行研究の成人の結果と類似していた。年齢の特徴として、未成年の大学生よりも20歳以上の大学生の方が、伝達的HL、批判的HL、HLの総点で有意に高かった。生活状況で比較をすると、家族と同居をしている者では年齢による差が認められなかったが、一人暮らしをしている対象者では差が認められた。以上から、大学生の場合、ひとり暮らしをしていることがヘルスリテラシーを高めることに関連があることが明らかとなった。 高校生全体の特徴としては大学生同様、相互作用的ヘルスリテラシーと批判的ヘルスリテラシーが低かった。機能的HL以外、高学年ほど高くなる傾向があり、批判的HLでは1年生より3年生の方が有意に高く、高学年ほど正しい情報を獲得する能力が高くなることが明らかとなった。男女間で比較をしたところ、機能的HLでは男子が有意に高く、批判的HLでは女子が有意に高かったことから、読み書き能力は男子生徒の方が、情報を批判的に吟味する能力は女子生徒の方が高いことが示された。 これらの結果を踏まえ、慢性疾患のある高校生、大学生との比較を今後実施し、疾患による影響が生じているか否かを検討していきたい。
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