平成28年度は、尺度の翻訳版の妥当性を確保することを目的に、コグニィティブインタビュー(CI)の準備を入念に行った。本研究は、トラウマ経験者へのインタビューであり、対象者がトラウマ経験を想起し症状を悪化させる可能性があることが、倫理的懸念事項である。そこで、対象者の研究に参加することのデメリットの軽減と、参加することによるメリットを増やすために、研究テーマ「出産によるトラウマ女性に関するケアの研究」の世界的な権威者である、ペニー・シムキン先生とフィリス・クラウス先生に、研究方法と対象者のケアについて、指導・助言を得て、研究方法の再考を行った。具体的には、研究者の質問技術の確保と、対象者がインタビューによって、トラウマ症状を再経験することの予防や、症状を再経験した場合の対処技術を研究者がマスターし、安全にCIを実施できるように、両氏が主催するワークショップ〝WHEN SURVIVORS GIVE BIRTH EDUCATOR TRAINING"、に参加して、「出産によるトラウマ症状をもつ女性に対する面接法とケアの技術」について、直接トレーニングを受けた。また、この研究において実施するCI後の尺度の信頼性と妥当性の検証研究において構成概念妥当性 (construct validity) の収束妥当性の検証に使用する尺度を、一連のトレーニングによって決定するに至った。今後、倫理的配慮を十分に確保しながら、コグニィティブインタビューと検証研究を遂行する計画である。
|