研究課題/領域番号 |
26670973
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上別府 圭子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (70337856)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 症例研究 / 家族看護 / エンドオブライフケア / グッドプラクティス / チーム医療 |
研究実績の概要 |
①臨床実践現場の看護職が症例を呈示し、多職種からなる実践者および研究者により奨励研究を行う、家族ケア症例研究会を5回行った。看護師・助産師・保健師・臨床心理士・学校教員・研究者(看護系・心理系)・大学院生・学部学生など多様な参加者のべ160名が参加した。長期入院を要する子どもと育児困難感のある母親、子どものいる終末期成人患者などといったさまざまな家族を対象とした、病院の外来・病棟、地域と連携して行われている、家族看護の特色あるケアを同定した。小児血液・腫瘍病棟における特色あるケアについて、症例研究論文にまとめた(投稿準備中)。死生観とメンタルヘルスに関するシンポジウムを開催した。 ②平成27年度に引き続き、みんなのMITORI研究会が主催する終末期医療に関する勉強会が実施され、平成28年度9月に全6回の勉強会が終了した。本勉強会前後において、医療・福祉従事者の看取りに対するケア態度が変化したかどうかを検証することを目的として、第1回勉強会への参加者かつ全6回の勉強会終了1カ月後にアンケートを回答したものを対象者とし、勉強会開始前・勉強会終了1カ月後のアンケート調査のデータを集計し、解析した(n = 15)。解析の結果、フロメルト(Frommelt)のターミナルケア態度尺度日本語版(FATCOD-B-J)の項目「死にゆく患者の身体的ケアには、家族にも関わってもらうべきだ」の得点が、勉強会後に有意に減少していた。また、勉強会後の自由記述には、「家族は家族にしかできない役割(意思決定や心の支え)に注力した方がよい」との意見がみられた。本研究の成果は、勉強会を主催した団体へ報告した後、平成29年2月福岡県久留米市で開催された日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会にて公表した。 ③介護施設のスタッフが行う支援の現状とその課題に関する調査に関する投稿は、準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①各症例の分析は進み、体系化やマニュアル作成に向けて準備中である。平成28年度は事情により班会議が実施できなかったため進行の遅れがあるが、平成29年度には進める予定である。症例研究の論文投稿に関しては、所属施設の倫理委員会から承認を得た。一方、死亡退院された過去の症例に関して、臨床現場の倫理委員から承認を得る手続きに時間を要していた。 ②については、順調に進行している。 ③についても、平成29年度前半に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①症例研究会に関しては、従来、教育的配慮から、臨床経験の浅い者を中心に実施してきたが、平成29年度は、高度実践看護師による実践を中心に研究を行う。また多職種による班会議を行い、Family Nursing in End of Life Care の体系化、症例研究の理論・方法論の創生を行い、マニュアル作成を行っていく。症例研究の論文投稿に必要な実践現場の倫理審査に関しては、引き続き、現場の理解を得て手続きを進める。 ②平成29年度は、平成27年度と平成28年度に実施された、みんなのMITORI研究会が主催する終末期医療に関する勉強会前後における医療・福祉従事者の看取りに対するケア態度に関する研究の成果を広く公表するため、国内の学術誌への投稿を計画している。結果の精練のために、平成29年2月に開催された日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会にて報告した内容以外にも、さらなるデータ解析を計画しており、その後に執筆へ移行する予定である。投稿は、プログラムに関する情報、アンケート調査の結果、勉強会のプログラムの評価を含めた構成とする。本研究の公表により、看取りに関する教育や研修プログラムの構築に示唆を与えるものとなることが期待される。 ③共同研究者らと討論をしながら、執筆、投稿を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の親族の介護、身内の不幸、本人の入院により、当初の計画が遅延した。また、研究協力機関との打ち合わせや倫理審査に想定以上の時間を要している。そのため、一部研究計画の見直しを検討中である。
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次年度使用額の使用計画 |
班会議を開催するための会議費、交通費 マニュアル作成、配布のための、消耗品費、印刷費、郵送費、人件費 成果発表のための、学会参加費、交通費、英文校正費、投稿費
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