研究課題/領域番号 |
26670977
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
波崎 由美子 福井大学, 医学部, 講師 (80377449)
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研究分担者 |
上澤 悦子 福井大学, 医学部, 教授 (10317068)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 若年がん患者 / 妊孕性支援 / 妊孕性温存ニーズ / 医療者の連携課題 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、本研究課題に関する予備研究を学会発表した。また、調査項目の作成にあたり国内外の先行研究に関する文献レビューを再度実施した。2012年に「日本がん・生殖医療研究会」が設立されて以来、医療者、がん患者やその家族、広く一般の人々への「がん・生殖医療」の普及、実践、研究が急速な勢いで進んでいる。そのため、再度、研究の動向、現状、問題点を明確にする必要が生じた。文献検索は、医学中央雑誌web版 Ver.5を使用し、検索時期は1984年4月~2015年3月31日とした。 結果、わが国において妊孕性温存に関する研究は2011年から認められ、その数は年々増加し149件であった。医師による妊孕温存治療法実施後の経過等、症例報告数が増加していた。原著論文では、各施設での妊孕性温存療法適応や手術成績、がん再発率や妊娠・出産状況を含めた治療成績に関する考察を目的としたものが多かった。研究対象(疾患)別に分析すると、悪性腫瘍患者、つまりがん患者に対する妊孕性温存治療について記述した原著論文や症例報告は、149件中78件(52.3%)であった。がん患者ではない、良性疾患である卵巣嚢腫、重症子宮内膜症、子宮筋腫、異所性妊娠などに対する子宮温存治療に妊孕性温存という言葉が用いられていた。治療に伴う「妊孕性温存」の重要性が普及してきた現れと考えられた。 看護の文献は1件で、本研究分担者による、広範囲子宮頚部摘出術を受けた子宮頚部がん患者への看護実践の解説のみであった。がん患者の妊孕性温存に関するニーズは明らかではなかった。 課題を整理し、がんの疾患、進行度、性別、年齢によって妊孕性温存の治療法が違い、看護の方向性も違ってくるため、生殖年齢にある若年女性がん患者に焦点をあて研究を実施することにした。現在、国外の研究に関する文献レビューを実施中で、調査項目を再検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「日本がん・生殖医療研究会」が設立されて以来、医療者や広く一般の人々への「がん・生殖医療」の普及、そして、実践、研究が急速な勢いで進んでいる。一方で、「がん・生殖医療」は新しい概念であり、わが国の医療者の関心や医療の実践には施設や地域でかなり差が生じているのではと考えた。そこで、再度、文献検討をもとに研究計画、データ収集内容を再検討する必要があった。そのため、当初の計画通りに進まず、研究計画の立案とデータ収集に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度 第1に、生殖年齢にある若年女性がん患者さんの妊孕性温存意識に関するニーズ調査を実施する。第2に、がん・生殖医療関連領域の妊孕性支援・連携意識と実践上の課題を明らかにすることを目的に、がん・生殖看護領域の専門および認定看護師、医師へのインタビュー調査を実施する。当初は、看護師のみへの調査を考えていたが、医師も含めた医療チームとしての連携意識と課題を明らかにすることが、看護支援を考える上で大切であるため、医師にも調査を実施する。調査内容は、1)患者への公平で十分な情報提供ができるためのしくみと課題 2)継続的な患者ケアの方法と問題点 3)倫理的な運用に関する意識と問題点などである。
平成28年度 引き続き調査を実施、データの分析により生殖年齢にある若年女性がん患者さんの妊孕性温存意識に関するニーズ、がん治療領域のがん看護専門看護師および認定看護師、医師、生殖医療領域の不妊症認定看護師、医師の若年女性がん患者の妊孕性温存支援・連携意識と課題を明らかにする。 分析結果、ASCOガイドライン、NCCNガイドライン、海外の看護研究結果を参考に、妊孕性温存のステップに基づいた看護師による「患者の自己決定への支援」「がん・妊孕性温存療法への支援と連携」の2項目からなる「若年がん患者への妊孕性支援看護プログラム」を提案する。ガイドラインを作成するにあたっては、十分なエビデンスが必要となるが、現在、エビデンスは構築中であり、まずは、妊孕性支援看護プログラムを立案することを研究の最終目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、学会参加による情報収集と文献検討が主な実績であり、当初予定していた研究計画の調査実施まで至らなかったためである。そのため、購入予定であった統計ソフト等の物品費や旅費、人件費・謝金分が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は調査を実施する。そのため、平成26年度に購入を予定していた統計ソフトの購入、研究協力者や施設への謝金、資料整理や人件費、質問紙印刷費や研究協力施設へのデータ収集のための交通費として、繰り越して使用する。 平成27年度請求額は研究実施に使用する。具体的には、インタビュー調査のための旅費、情報収集のための学会参加旅費、研究協力者への謝金、データ入力補助の人件費にとして使用する。
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