平成28年度は、文献研究で明らかになったことをふまえ、妊孕性支援看護モデル作成の一助とすることを目的に、がんと生殖領域看護師の、若年乳がん患者への妊孕性に関する情報提供、意思決定支援の状況、態度と課題を調査した。 対象は、全国のがん診療連携拠点病院427施設、「妊孕性について相談できる生殖医療機関」としてWeb上で「日本がん・生殖医療研究会」に掲載されている27施設(がん診療連携拠点病院として重複掲載されている40施設を除外)で若年乳がん患者の情報提供、意思決定支援に関わっている看護師とした。調査票を454施設/881名に配布し、全体の有効回答は243施設345名(有効回答率39.2%)、内訳はがん診療連携拠点病院227施設/329名(38.5%)、生殖医療機関16施設/16名(59.3%)であった。 妊孕性支援に「取り組んでいる」が115施設(47.3%)、内訳はがん診療連携拠点病院101施設(44.5%)、生殖医療機関14施設(87.4%)であった。115施設の連携形態は「他施設連携」61施設(54.0%)、「同一施設内連携」23施設(20.4%)、「他施設+施設内連携」29施設(25.7%)であった。看護師の98%が、若年乳がん患者への妊孕性に関する情報提供は重要と認識していた。がん領域の看護師は、「がん患者の妊孕性温存に関する知識とエビデンスの不足」「時間がない中で必要な情報をタイミングよく提供することの難しさ」「患者にとって本当の意思決定となっているかの評価」「家族を含めた意思決定支援の難しさ」「妊孕性について平等に情報提供できる体制や生殖医療領域との連携体制の不十分さ」を課題としていた。生殖領域の看護師は「時間がない中での生殖医療に関する情報提供の難しさ」「時間がなく気持ちに寄り添えない」「治療(採卵)がうまくいかなかったときのフォロー」を課題としていた。
|