研究課題/領域番号 |
26670980
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
我部山 キヨ子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20243082)
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研究分担者 |
千葉 陽子 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (80432318)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 産褥期 / メンタルヘルス / ライフラインインタビュー法 |
研究実績の概要 |
目的:妊娠初期から産後1年にかけての女性の継続的な心の変化とそれに影響を与えたイベントを把握する。 対象:子供の月例が13~15か月(満1歳~1歳3か月まで)の母親15名 方法:本研究用に修正したライフライン・インタビュー・メソッド(Lifeline Interview Method)を用いた個別インタビューを実施した。具体的には、時間(週・月)を横軸、自分心のスケール(-10~0~+10)を縦軸にした用紙に、妊娠の始まり(最終月経初日)から出産後1年に至る心の変化を示す曲線を描いてもらった。曲線の上昇点、下降点でのイベントを記載してもらった。インタビュー内容はICレコーダーで録音され、曲線とイベント内容を録音データに従って第1研究者が確認し、第2研究者も同様の確認を行いダブルチェックした。その後、イベントを週数や曲線の向き(上昇・下降)に従ってまとめた。 結果:参加者は個々に多用な曲線を描いたが、上昇点のイベントとして「妊娠の発覚」「心地よい季節」「出産」、下降点のイベントとして「つわり」「新生児ケアの困惑」「(経産婦の場合)上のこのこと」という同様な記述が見られる傾向にあった。 考察:妊婦や母親の心の変化に影響を与えるイベントの傾向がうかがえ、特に心理状態が落ち込む下降点のイベントや発生時期を事前に把握し予防的介入を行うことの可能性が示唆された。「新生児ケアへの困惑」による心理状態の落ち込みからは、産後の育児支援の重要性がうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した調査(妊娠期から産後3ヶ月までの女性とパートナーのための育児支援プログラムの開発)の前提として、本調査の実施を行った。夫にも同様のインタビューを行い、夫の継続的な心の変化とイベントの特徴、夫婦1組ずつの曲線とイベントの比較も試みたいが、仕事が忙しいなどで研究協力者が得られにくい状況であった。今後、研究協力可能な夫の数を増やすことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の行った調査(妊娠初期から産後1年にかけての女性の継続的な心の変化とそれに影響する因子):育児期にある女性よそのパートナーへのインタビューを重ね、曲線変化とそれに伴うイベントの傾向への信頼度を高めていく必要がある。 平成27年度の調査2:妊娠期から産後3ヶ月までの女性とパートナーのための育児支援プログラムを開発するために、社会的・身体的ハイリスクとローリスクの妊産褥婦とそのパートナーを対象に、妊娠中期からのメンタルヘルスの推移と愛着形成の推移を調査する。現在倫理委員会の承認を得て、調査施設を確保した段階である。 今年度の研究の具体的内容は以下の通りである。 目的:社会的・身体的ハイリスク・ローリスク妊産婦とそのパートナーを対象に、妊娠期からの主観的・客観的メンタルヘルス・愛着形成・親性発達という3側面を用い縦断的調査を行う。対象:妊産婦とその夫・パートナー。調査時期:妊娠中期・妊娠末期・産褥期・産後一か月健診時点で自記式質問紙調査と血中Cortisol値を合計4回(8種類)実施する。調査内容は新版STAI・EPDS・対児感情評定尺度・育児動機評定尺度を用いる。病歴調査は年齢・学歴・職業・家族構成・家族背景等の個人属性、妊娠分娩歴・妊娠時の婚姻状況・母体合併症の有無・児の発育状況(正常逸脱の有無)・分娩所要時間・分娩形態・出血量・児の性別・児の出生時体重などの妊娠・分娩新生児因子を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
産後3ヶ月までの夫婦の調査は、極めてすくないことから、申請した調査内容を行う前に、先に面接調査で調査内容の項目をより精選するために、事前調査として調査方法を変えて面接調査を行った。この面接調査の対象は、調査者の近隣地区の体調としたため、交通費や調査費が少額で抑えられたことで、研究費の使用が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,交付申請書に記載した調査が実施可能(研究計画書の倫理申請および調査施設の承諾済)であり、本来申請した調査内容が4月から実施できる。具体的方法については、今後の研究の推進方策に記述した。
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