研究課題/領域番号 |
26671004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
仲上 豪二朗 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70547827)
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研究分担者 |
峰松 健夫 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00398752)
真田 弘美 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50143920)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クオラムセンシング / 緑膿菌 / 創傷治癒 / 褥瘡 / 高齢者 / 糖尿病 / 感染 / 動物実験 |
研究実績の概要 |
本研究では、緑膿菌クオラムセンシングシグナルであるアシルホモセリンラクトン(3-oxo-C12-HSL)を応用した創傷治癒促進技術の確立に向けて、動物実験により効果検証を行うことを目的としている。 これまでの実験により、3-oxo-C12-HSLを創傷部位に塗布すると、肉芽の収縮や線維芽細胞の凝集、ケラチノサイトの遊走、酸化ストレスレベルを減少させることを確認してきた。一方で3-oxo-C12-HSLはワイルドタイプラットの創部で炎症を惹起することが分かっており、慢性的な炎症状態にある糖尿病ではネガティブな作用として働いてしまう可能性がある。そこで、アシル鎖長の異なる他のAHLの創傷治癒に与える影響を確認するため、C12にアシル鎖の長さが近いC8、C10、C14について検討した。 創傷治癒遅延モデルとしてSTZ誘発糖尿病ラットを用いて実験を行った。、創作製後4日目で10μMの各AHLをランダムに選択した何れかの創に24時間塗布致した。もう片方の創をコントロールとした。創作製後7日目に創周囲を含めてサンプリングし、HE染色に供した。創縁部ではC10で比較的炎症性細胞の浸潤が弱いことが明らかとなった。創中央部ではC12やC14で炎症性細胞の浸潤が強く、また線維芽細胞が多数観察された。さらに、C8とC10においては血管新生様所見が観察された。遺伝子発現解析により、C10投与群で炎症マーカーであるPtgs2の発現が抑制される傾向にあった。血管新生のマーカーとしてHif1aではC10およびC14で発現が抑制されていた。 C12は糖尿病モデルラットにおいても炎症性細胞の浸潤が強いことが確認できたが、一方で3-oxo-C10-HSL は不要な炎症を抑えながら創傷治癒を促進させる可能性が示され、Ptgs2の発現の結果と一致している。C10は炎症を惹起することなく血管新生を促進することで創傷治癒を促進させる可能性があることを見出した。今後、C10に着目し、創傷治癒促進の更なるメカニズム解明を行う必要がある。
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