介護度の高い施設利用者が増加する中、いかにして安全で安楽な介護技術を提供するかが重要な課題である。その解決にはケアスタッフの介護技術力の向上と共に介助機器の活用も選択肢の1つであり、スタッフと利用者双方にとって利便性の高い介助機器の開発が必要である。これまでの研究で、認知症高齢者を介助するケアスタッフは、「排泄介助」に困難感を持っていることを明らかにした。排泄はヒトとしての尊厳を保つ意味でも、安易におむつ対応を行うべきでなく、トイレ誘導が極めて重要である。しかし、認知症高齢者が単独でトイレから出てきた場合、本人からの聞き取りだけでは排泄の有無、そして排泄量を把握することは困難である。本研究では、便座に取り付けるだけの簡便なセンサで、排泄の有無および排泄回数の多い排尿量の定量評価を挑戦的に試みた。 測定原理は以下である。体内から排泄された直後の尿は、ほぼ中枢温を保っている。この排尿からの熱を全て測定することで、排尿量の定量評価を試みる。まずは基礎実験として、37度の水を流量と流速を変化させて測定した。これを非接触温度計で測定し、水落下前の温度(室温)と水落下中の温度差を信号処理することで、流量との線形関係を得ることに成功した。これらの研究成果の一部を学会や展示会などで多数発表した。
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