研究課題/領域番号 |
26671014
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
結城 美智子 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 教授 (20276661)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 外来化学療法 / 抗がん剤 / 曝露 / 家族 |
研究実績の概要 |
過去訳30年間の研究知見を根拠にすすめられてきた医療機関・医療従事者等における抗がん剤の職業性曝露対策とは異なり、在宅がん患者の治療(外来化学療法等)に伴う家族への抗がん剤曝露の実態は明らかにされていない。本研究の目的は、外来化学療法をうけたがん患者の自宅において活性化されたままの抗がん剤が含まれる患者の排泄物(又は排泄残留物)を介して同居家族にその薬剤が曝露しているかどうかを証明することである。 平成26年度は、がん化学療法に用いられている薬剤のへの曝露の実態について国内外の文献と資料等から吟味した結果、(1)研究対象は、そのほとんどが医療機関内の物理的環境における薬剤の汚染の程度の検討、(2)人への曝露の実態把握では、医療機関内における医療従事者を対象とした知見がほとんどである、(3)抗がん剤曝露予防に関する国際的な遵守指針が存在するが、それらは主に医療機関内での医療従事者を対象とした内容であることが整理された。 がん治療法のひとつである化学療法は外来で行われることが普及してきており、このことは治療後に生活する自宅内において、患者の排泄物を介しての同居家族への抗がん剤曝露リスクが高いことが懸念されるが、国際的な抗がん剤曝露予防指針において患者の自宅内での曝露予防に関する方策はエビデンスがないことから、本調査ではその実態を把握し、予防のためのエビデンスを蓄積していくことの必要性があることがわかった。また、それらは対象者の主観的な行動評価にとどまらず、バイオモニタリングなどの客観的評価の重要性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度は、抗がん剤により人的曝露の実態について国内外の先行研究、資料等を検討した結果、これまでの調査は医療機関内における医療従事者を対象とした検討がほとんどあることがわかった。このことから、本研究では、外来で化学療法をうけた患者が同居する家族とともに対象として、尿からの治療抗がん剤の検出をおこなうことを予定してすすめてきたが、外来化学療法後の長期間にわたっての対象者の確保に関する調整が困難であったこと、および研究代表者が平成26年度の途中で所属機関の異動となったため研究実施の再調整に時間を要していることのため、遅れた原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、外来で化学療法をうけているがん患者とその家族を対象として、化学療法直後から7日間にわたって自宅で採尿を行い、尿中から抗がん剤の検出を行う。これまでに明らかにされていなかった、患者の自宅内での複数(2名以上)の家族を対象として行うことが本研究の特徴となる。研究実施のフィールドとなる医療機関との調整もすすめているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象となる患者とその複数の同居家族から尿検体を、抗がん剤曝露に関するバイオモニタリング分析の専門会社(スウェーデン)に依頼することができていないため、平成26年度は主な予算を執行できていなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、患者とその同居している複数の家族を対象に、外来化学療法後から7日間程度にわたって自宅内での排泄ごとに採尿し、それを検体として分析する。分析は、冷凍したまま検体を、世界的なシェアを占めるスウェーデンに所在する専門の分析会社に依頼する。1組の患者家族で約126の尿検体として、2組以上で計約300検体の分析を見込んでいる。専門機関での検体分析費用のほか、データ収集のため旅費、検体航空輸送費及び事務物品等の執行予定である。
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