本研究は、東日本大震災によって壊滅状態に陥った福島県浜通りの精神科医療システムを再構築していくプロセスを、「語らい」という方法を用いて当時の状況を再現し、それをまとめていく事例研究である。事例は、津波によって浸水し、機能が止まってしまった沿岸部の精神科病院(事例A)と、原発事故によって精神科医療システムが崩壊してしまった相双地域(事例B)である。事例A、事例Bともに、震災によって新たなシステムに立て直すことができたが、その復興の過程には、これまでに培われてきた精神保健医療関係者の信頼関係とそのネットワークを基盤に、明確な復興への方針およびそれに向かう人々の協働があった。
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