本研究は、口腔ケア手技や口腔ケアプログラムに関連する課題の遂行による大脳前頭前野の活性化について、近赤外線分光法(NIRS)を用いて脳血流量の変化の面から解析を進めるとともに、認知機能の向上のための口腔ケアプログラムの構築につなげることを目的としている。本研究期間の最終年度である平成29年度には、顔面頬部の寒冷刺激と口腔内の寒冷刺激による大脳前頭前野の左腹外側部領域(Lt.VL-PFC)および左背外側部領域(Lt.DL-PFC)の2つの機能局在部位の活性化に関する解析結果を取りまとめ、Journal of Fukuoka Dental College(査読有)に『Trigeminal nerve-related cold stimuli activate the cerebral prefrontal cortex regions related to cognitive performance』として論文採択された。研究期間全体を通じて実施した研究成果として、①上記の寒冷刺激に関する新しい知見以外に、②口腔内ブラッシング刺激やミント系味覚・嗅覚刺激による大脳前頭前野の機能局在部位の活性化に関する新しい知見や、③遂行機能や選択的注意機能の評価検査の一つであるストループテストの学習効率の変化と前頭前野の機能局在部位の活性変化との関連についても新しい知見を見出した。本研究において見出したこれらの知見は、口腔内ブラッシング刺激・寒冷刺激・ミント系味覚刺激を効果的に統合した認知機能向上のための口腔ケアプログラムの構築のための科学的根拠となりうる。さらに、倫理審査の承認が得られた高齢者施設入所者を対象とした口腔ケアプログラムによる認知機能の変容・向上を検証する臨床研究を開始することができ、臨床応用につなげる臨床研究として自己評価している。
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