研究課題/領域番号 |
26671028
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
木立 るり子 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (60197192)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リスクコミュニケーション / 放射線 / 災害 / 教育プログラム |
研究実績の概要 |
本研究は、放射線リスクコミュニケーションの現状と教育ニーズの現状調査を基に、多様な場と時期に対応できる放射線リスクコミュニケーションに必要な内容を精選し、放射線リスクコミュニケーター養成の教育プログラム開発を目的としている。 2年目にあたる平成27年度は、原子力施設を有する地域におけるリスクコミュニケーションに関する認識を明らかにすることを目的に、全国の原子力発電所から50km圏内にある自治体役場105ヵ所に各3部、保健所・保健センター66ヵ所に各1部、訪問看護ステーション151ヵ所に各1部の計532部の質問紙を郵送した。自治体への発送数315部のうち回収は108部(34.3%)、保健所・保健センターの回収13部(19.7%)、訪問看護ステーションの回収は33部(21.9%)であった。質問内容は、基本属性のほか、リスクコミュニケーションと放射線リスクコミュニケーションに関する認識に大きく分けられる。それぞれ、知識、必要性、講演等への参加希望、リスクコミュニケーションの担当者、困難さ等について尋ねた。 結果として、原発周辺の自治体では、放射線リスクコミュニケーションの必要性を認識しているが、基礎的知識に自信が持てない状況で、放射線リスクコミュニケーションは浸透していないと考えられた。また、どの立場が主導で行うのか合意が得られていないと推察された。知識の習得を望んでいるのは明らかであった。保健師、自治体職員は、リスクコミュニケーションを実施する機会があるため認知度は高かったが、災害弱者である高齢者や要介護者を担当している訪問看護師における認識は低く、基礎的な学習が求められる。コミュニティの中でリスクコミュニケーションを浸透させるための方策が今後の課題として残された。 今後は、インタビュー調査により放射線リスクコミュニケーションが浸透するための具体的な課題を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)全国のUPZ(緊急時防護措置準備区域)内に立地する学校の教員を対象とするニーズ調査(質問紙調査)2)全国のUPZ 内に立地する保健医療福祉施設職員を対象とするニーズ調査(質問紙調査)は、自治体の教育委員会を対象者に加え、平成27 年度に郵送による調査を実施、分析済み。…順調に経過 3)福島県における学校関係者や自治体職員、保健医療福祉専門職らを対象とするリスクコミュニケーションの体験の調査(面接法)を実施予定であったが、1)2)の対象者への面接調査に変更し、平成28年度に実施予定とした。…やや遅れて経過 4)平成28年度においては教育プログラムの実施を希望した団体等に実践し、その結果を評価する計画であったが、平成27年度のうちに1ヵ所に実践でき、成果評価及びインタビューデータを分析中である。…予定より早期に進展している 5)大学教育の中での放射線リスクコミュニケーションに関する教育内容の構成ができ、科目の一部として実践を始めた。平成28年度からは、教養教育の選択科目として開講予定である。…予定外の進展 6)平成27年度以降の推進方策として、福島県の被災住民への健康相談、メンタルケアの実践から住民の心理を理解することを挙げていた。福島県内において避難住民を対象としたリスクコミュニケーションを実践する機会があり、本研究の目的達成にむけて有意義な活動となっている。…予定外の進展
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今後の研究の推進方策 |
最終年 (1)原発周辺の自治体で放射線リスクコミュニケーションを推進するための課題の抽出を目的としたインタビュー調査を推進する。 (2)放射線リスクコミュニケーションの教育が現実的なものとして認識されうる演習の教材開発を推進する。 (3)活動と成果の総括まとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では全国UPZ内の教諭を質問紙調査の対象者と考えていたが、自治体教育委員会に対象を変更したため、結果として調査郵送費執行額が減った。 当初の計画では、福島県におけるインタビュー調査のための交通費、宿泊費、日当を計画していたが、面接調査の予定変更と遅れのため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、次年度の助成金と合わせて、インタビュー調査のための交通費、宿泊費、日当、研究補助謝金、成果発表等に使用したい。
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