研究課題/領域番号 |
26671034
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊藤 美樹子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80294099)
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研究分担者 |
本多 智佳 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40625498)
祖父江 友孝 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50270674)
平井 啓 大阪大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70294014)
大北 全俊 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70437325)
喜多村 祐里 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90294074)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 終末期医療 / 超高齢者 / 延命治療 / 入院 / 医療・ケアの評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)病院で死亡した85歳以上の超高齢者の入院事象がどのように生起しているのか、また2)そのような事例に対して入院中に提供される医療・ケアの実際と、医療・ケア提供者である医療者、ならびに超高齢者の介護や治療の選択などを担う家族の評価や思いを明らかにすることを通して、超高齢者に対する終末期の医療提供の課題を整理し具体策を検討することである。平成26年度は医療提供側を対象に西日本にある3施設(病院、老人保健施設)の協力を得て、医師・看護師・介護職ら計24名に対してインタビュー調査を実施した。うち看護師計18名について分析を行った。 超高齢者は死亡にいたる最後の入院において、入院時には意思決定能力が低下した場合がほとんどであり、治療のためとその病院で死ぬまで過ごすための入院があった。 前者の場合は、患者が臨死期にあることが医師・看護師・患者の家族間で正式な合意・表明があれば、生活を豊かにするケアが実践されやすく、ない場合は患者に負担の大きいと考えられる医療的な処置が継続されていた。ただし正式な合意・表明があっても、週末や夜間など看護師長や常勤医が不在の場合には延命処置がされやすいことを明らかにした。後者の入院の場合は、家族が在宅死を断念した、また単身生活者で患者に身寄りがないことにより生起していた。 また看護師は自分たちが行った医療やケアに対する評価において、患者死亡後の家族の評価を重視していた。一方で、入院中の医療によって患者の状態が安定したり、衰退がゆっくりすることは、家族が終末期の有限性を実感しにくくするため、家族の面会や訪問頻度が少なくなりやすく、家族とも継続的なコミュニケーションができにくくなるという状況があり、患者にとって、また家族にとって延命処置や入院による医療提供についての看護師の戸惑いや葛藤を捉えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26度当初計画は主に病院を調査フィールドとして超高齢者の最終入院の実情の把握と終末期超高齢者の入院による医療提供に対する医療従事者への面接調査を実施する予定であった。大阪府・近郊地域での調査の計画であったが、最終的に協力が得られた西日本の3箇所の病院・施設で調査を行うことができた。ただ、調査は平成27年の3月に実施した分もあり、分析が未着手となっているデータがあるため、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、昨年度までに収集した医療従事者、介護職等のインタビューデータの分析を進め、その成果を学会発表や論文発表を行う。また高齢者の入院・入所中の医療・ケア提供者の視点や価値のみならず、医療・ケアの受けてとなる家族(や患者となりうる人)の視点や価値を、インタビュー調査と自記式質問紙調査の2つの調査を実施し、質的、量的な側面から把握する。家族対象の調査は、医療従事者へのインタビュー調査を実施した施設がある二次医療圏とし、地域ベースで調査を配布する。また自記式質問紙調査の実施の際にインタビュー調査の依頼を行い協力者を得る計画である。 また同時に調査協力者に対する結果のフィードバックのため、報告書ならびにホームページの作成を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
・医療従事者へのインタビュー調査の3つめの施設については、調査の実施が3月中旬になったこと、またその調査の依頼過程において、調査協力者の人数が多かったため、当初4人で現地へ調査へ赴く予定であったが、うち2人が都合で参加できなくなり、その分の旅費、ならびに調査後のデータの整理にかかる調査協力者謝金分が次年度への繰越となった。 なお3月の調査のデータ量は当初の予定の倍程度多いので、繰越し金は謝金にあて、平成27年度4月から使用している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分は調査協力者用のPC購入ならびにインタビューデータ整理のための研究協力者謝金として使用する。 また今年度の助成金は、1.家族調査の実施(インタビュー調査、自記式質問紙調査)にかかる費用、2.研究成果の学会発表のための旅費、学会参加日、3.論文発表のための校正など投稿にかかる諸費用、4.会議費、5. 結果をフィードバックするためのホームページの作成、更新に使用する計画である。
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