研究目的:乱雑な居室状態は、転倒や火災、アレルギー疾患への関与の他、ストレス等精神的健康へも悪影響を与える。本研究において、慢性的に片づけられない若者の生活困難を改善するための介入方法を検討し、評価結果の活用により対象者の生活の質の向上を目的とした。 実施計画と成果:片づけられないことによるストレスを測定する尺度の開発を試み、該当ストレスと関連要因について測定した。その結果、看護・福祉系大学生において整理整頓が苦手な者は自尊感情が低く、一人暮らしの学生は頻回に整理整頓・掃除を行っていても乱雑な居室状態の改善が進まない状況があった.これらの対象者への整理整頓方法習得に向けた学習機会を設ける必要性が示唆された.次にこれらの結果を基に教育プログラムを開発した。評価方法は整理整頓が苦手な12歳~54歳の62人を2群に分け、介入群にはプロによる訪問作業+ワークショップを実施し、コントロール群にはプロによる訪問作業のみを行う非盲検並行群間層別無作為化比較試験にて7か月後の対象者の居室の状態(Clutter Image Rating)と乱雑な居室によるストレス(Saving Inventory-Revised)、自尊感情尺度得点で評価した。7か月後の整理整頓行動の有無とその理由についてはフォーカスグループインタビュー(FGI)にて調査した。その結果、両群間の性・年齢等調整による変化量の有意差はなかったが、これは、両群にプロによる訪問作業を加えたことによるワークショップ単独の効果を測定できなかった事が考えられる。しかし、介入群における上記3指標すべてにおいてコントロール群より大きな改善傾向を示し、実践現場への応用を行うことが可能と考えられた。FGIによる整理整頓行動継続の理由は、ワークショップによる仲間の存在と現実の生活に合った方法の習得やスモールステップによる達成感・自信が挙げられた。
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