研究実績の概要 |
インターネットに接続する機器数の飛躍的増加に伴い,高速・高信頼なネットワークが必須になる一方,従来のContent-Addressable Memory(CAM)によるInternet protocol(IP)ルータのパケット処理LSIでは,総当り検索のためIPアドレス数の増加に伴い,その消費電力が膨大になってしまう.この問題を解決するために,本年度は確率的演算に基づくSparse clustered network(SCN)の活用により,IPパケット処理LSIの大幅な低電力化を実現する,検索アルゴリズムの考案及び具体的なアプリケーション下での性能評価を行った. SCNは入力データ(パケット)に関連する記憶データのみの検索を行う部分検索で,総当り検索を行う従来CAMと同等の検索を行うことが可能でなるため, 検索に係る処理を大幅に削減出来る可能性がある.そこで,2000パターンのデータを検索可能な検索エンジン用アルゴリズムをSCNで実現した結果,従来CAM実現と比較して,処理時間を8.6倍高速に出来ることが分かった(IIEE SIPS, pp.133-138, Oct. 2014.). さらに,そのアルゴリズムのハードウェア実装を行い性能評価を行った.ハードウェア実装には90 nm CMOSプロセスに加えて,不揮発性素子であるMagnetic-Tunnel-Junction(MTJ)を活用した.不揮発性素子であるMTJをデータの記憶部分に用いることで,検索を行わない際にLSIの電源を完全にOFFにすることが出来るため,CMOSに起因する静的電力を大幅に削減可能になる.その結果,従来CAM実現と比較して,89%のエネルギー削減が可能となった(IEEE JETCAS, vol. 4, no. 4, pp. 460-474, 2014. ).
|