研究課題/領域番号 |
26700008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 俊彦 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (70376599)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マルチメディア / ユーザナビゲーション / ビッグデータ / 魅力工学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)ユーザが生成するメディアに対するユーザ自身の主観的価値の検証を行うこと、及び(2)個人のメディア生成行動をナビゲーションしより良いメディア生成を支援することである。 本年度は「(2)個人のメディア生成行動ナビゲーション」に関して、(a)行動デザイン支援、(b)素材作成支援、(c)コンテンツ作成支援、の3つの小問題に分割してそれぞれについて取り組み、下記に示すとおり当初の計画以上の素晴らしい成果を達成できた。 「(a)行動デザイン支援」は、いい素材やコンテンツを作成するための前段階として、ユーザが満足の高い体験を得ることを支援するものである。26年度は、個人の趣味嗜好と気温・天候を考慮した旅行ルート推薦、不動産検索における間取りを用いた直感的な間取り検索技術を実現した。「(b)素材作成支援」は、画像・ビデオクリップ・テキストタグなど単体の素材データについて、その生成を支援するものである。26年度は、ファッション画像解析、タグ解析によるSNS上での人気予測と人気獲得のためのタグ推薦、タグが人気度に与える影響の年代・地域差解析などを実現した。「(c)コンテンツ作成支援」は、複数の素材を組み合わせて映像やプレゼントいった高品質なコンテンツを生成することを支援するものである。26年度は、文書・音声情報に基づくプレゼンテーションの印象解析、テレビドラマの放送前視聴率推定などを実現した。 どれもユニークな試みとして多くの受賞や招待講演依頼を受けている。また、会議発表なども順調に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで、非常に多くの項目について成果が出ており、研究計画の内容から大きく拡大して様々な研究分野に展開している。そのハイライトのみをいくつか列挙する。 ソーシャルネットワークにアップロードされた画像や映像などのコンテンツの人気度を予測しさらに人気度を高めるためのタグを推薦するためのアルゴリズム群について、DF-W、FolkPopularityRankという2種類の手法を提案し、解析や推薦を行った。また、大規模データやソーシャルネットワークにコンテンツを推薦されたタグ群と共にアップロードするという実証実験によって有用性を確認した。関連して、コンテンツの人気度に影響を及ぼすタグの地域・文化の差異やユーザの挙動の時間変化を詳らかにした。提案手法を一般の人が手軽に利用できるよう、WEBアプリの構築行った。 従来の不動産検索システムはキーワードによる検索やAND/ORによる絞り込み検索であるが、この方法では各部屋の間取りや広さといった構造について検索することは難しい。そこで、不動産の間取りをグラフ構造で表現し、ユーザの入力するクエリグラフと類似度が高い物件を出力するシステムや、ユーザが提示された物件に対して「好き・嫌い」のフィードバックを繰り返すだけで好みの間取りを持つ物件を提示できるシステムを提案した。そのほか不動産情報処理を行い、家賃の決定要因解析などを行った。 プレゼンテーションの解析について、これまで行ってきたテキスト・音声解析に加えジェスチャ解析や視線追跡など新たな特徴を用いることで、より高い精度で印象予測を行える技術の研究を行った。さらに、複数の印象間の相関や、複数の特徴量を用いたときの機械学習器の出力の相関を考える新たな機械学習の手法について詳細な技術の検討と有用性の確認を行った。その他、ソフトコーディング法を用いた予測精度の改善や、リアルタイム処理に向けた検討などを行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後も様々な分野に展開を図っていく予定である。そのうち、ハイライトのみを下記に述べる。 まずは、旅行ルート推薦について、天候・気温も追加情報として考慮した推薦システムの完成を目指す。さらには、観光地・レストラン・ホテルなどの評判サイトから特徴的な評価項目を抽出し、それに対してどのような評価がなされているか要約する手法について検討する。 ソーシャル人気度の解析および人気度増強のタグ推薦についてはFolkPopularityRankアルゴリズムの完成を目指す。また、テレビドラマの視聴率予測にも応用展開できることがわかっており、様々な分野への応用を考える。 プレゼンテーションの解析について、日本語対応とリアルタイム解析の実現を目指す。また、スライドコンテンツの解析に新たにチャレンジする。複数の印象間の相関や、複数の特徴量を用いたときの機械学習器の出力の相関を考える新たな機械学習の手法について詳細な技術の検討と有用性の確認を行う。教育コンテンツやCM・テレビショッピング映像などへの応用も予定している。 不動産情報処理について、不動産物件画像の解析、IoT技術を用いた物件の価値・住みやすさの定量化などについて検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
小額が残ったため無理して使用せず、次年度持ち越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度もクラウドワーカーに依頼して主観評価やデータ処理を行っていく予定であり、そのために使用する。効率的な予算執行に努める。
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