研究課題/領域番号 |
26700009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 誠 京都大学, 情報学研究科, 助教 (00646911)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報検索 / 検索意図 / 再検索 / 情報推薦 |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度の課題である質問回答に基づく検索意図の誘出を深化させると共に,選好の誘出可能性の検証を行った. 成果1:「クエリ推薦を用いた検索意図の誘出」質問回答に基づく検索意図の誘出という課題に対して,クエリ推薦の使用の仕方によってユーザが持つ検索意図を推定し,可能な限り意図を満たせるような検索結果の提示を行う方法について研究を行った.この問題に対して,我々は128名のユーザのクエリ推薦利用行動をデスクトップおよびモバイル環境において観察し,ユーザモデルを構築した.構築されたユーザモデルによって検索結果の質を予測し,これを最大化するようなクエリ推薦・検索結果を生成する方法を提案した. 成果2:「画像を用いたWebページの再検索支援」質問回答に基づく検索意図の誘出という課題の特殊な場合として, Webページ閲覧時にそのページの内容を表すような画像を同時に提示し,そのWebページを再検索する際の手がかりとして利用する提案を行った. 成果3:「画像から喚起される行動の推定」選好の誘出可能性の検証という研究課題に対し,画像から誘発される行動に関する選好を推定する方法について提案を行った.画像の特徴と画像に付与されたコメントとの関係性を対応づけることによって,画像から生じさせられる印象を推定し,その印象に基づいて人がどのような行動を画像から喚起されるかを推定する研究を行った. 成果4:「音楽刺激に対する脳活動を利用した音楽推薦」選好の誘出可能性の検証のために,ユーザに音楽を試聴させその際の脳活動から音楽の選好を推定する方法について研究を行った.本年度においては,推定方法の検討に止まり実際の脳活動は計測しなかったが,オンラインアンケートを活用した予備実験を行うことによって,音楽の選好に関連する可能性の高い脳部位を特定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は選好の誘出を目的としており,複数の課題に対して一定の成果を上げているが,本来であれば最適な刺激選択の手法を開発する予定であったため十分な成果を上げられたとは言いがたい.本年度は前年度より継続していた検索意図の誘出については難関国際会議での発表を行うなど大きな進展が見られたが,一方で,本来取り組むべきであった選好の誘出に関しては,十分な成果を上げられていない.ただし,選好の誘出という課題に対しては元々2年間をかけることを予定しており,最初の1年である本年度において音楽と画像の両方において研究を行うことができた点は当初の予定以上の進展であったと言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の進捗状況の遅れを考慮し,今後の方針としては以下の2点の変更を予定している: 選好誘出対象の拡張: 当初は音楽選好のみを対象にしていたが「音楽刺激による脳情報からの音楽選好誘出」に加えて,「画像刺激による行動選好誘出」についても取り組む.後者については,本年度取り組み始めた課題であり,次年度も引き続き継続を行い,画像が人に与える影響について研究を行う予定である.これによって,選好誘出の適用範囲を拡大し,いずれかの研究が予定通りに進行しないリスクを低減できると思われる. 選好誘出の研究期間の延長: 当初の予定では1年9ヶ月の期間を選好誘出の研究に当てることを予定していたが,この研究課題の困難さから「信頼性の高い意見誘出」という研究課題を翌々年度に延期し,選好誘出の研究期間を2年間に延長することを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は高性能な生体情報計測デバイスを購入する予定であったが,これを利用した実験を行う前の予備実験において予定していた進捗及び成果が得られなかったため購入に至らなかった.脳情報の計測のために脳波を計測すべきか,または,fMRI装置を用いて脳活動を計測すべきかを本年度の研究成果を元に検討し,次年度にて脳波計測デバイスまたはfMRI装置による実験費用に次年度使用額を充てる予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度,予備実験において計測された脳波およびfMRI画像の両方による研究の検討を行い,脳波の計測装置,または,fMRI装置による撮像に使用する予定である.
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