研究課題/領域番号 |
26700011
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野口 泰基 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90546582)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知科学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、主に視覚情報が脳内で意識的に認識される仕組みを、前行性信号(低次野から高次野へと伝達される神経信号)に注目しながら解明することである。計画2年目にあたる平成27年度は、①心理学的アプローチ・②脳活動計測アプローチ・③脳刺激アプローチの3つを行った。 その結果、まず①では交付申請書において記載(予測)した視覚の新現象(ある視覚刺激の意識認識が、別の視覚刺激によって事後的に促進される現象)を、被験者数十人を対象とした心理実験を行うことで統計的に立証した。この現象は意識認識における前向性信号の役割を示唆する発見である。然るべきコントロール実験のデータを追加した後に英文国際誌に投稿し、受理された。また②では、過去の計画書に記載の通り、無意識知覚中の逆行性神経信号(前向性信号とは逆に、高次野から低次野へと伝達される信号)を観察することを主眼としている。この目的を達成するための実験パラダイム(脳波や脳磁図計測に転用可能な無意識刺激)は既に開発し、これも英文国際誌に発表した。最後に③に関しては脳刺激装置を導入し、予備的な実験・解析を行った。この装置は経頭蓋電気刺激と呼ばれ、脳内に直流性または交流性の電気刺激を与える手法である。刺激電極の一方を高次野・もう一方を低次野(一次視覚野)に置き、視覚刺激提示後の特定時間帯で脳を電気刺激したところ、視覚刺激の識別成績が上昇することを発見した。今後は参加者の数を更に増やし、前向性信号との関係性を探る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
意識知覚における前向性信号の重要性を支持する成果が得られているため。また英文国際誌への論文発表も既に行っているため。
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今後の研究の推進方策 |
①心理学実験・②脳活動計測実験・③脳刺激実験という3種類全ての実験を同時並行的に推進する。特に③の脳刺激装置は、脳における神経信号(電気信号)の流れを変える可能性を持った機器である。この機器を用いて本研究がターゲットとする第2前行性信号を阻害あるいは促進することにより、同信号と意識知覚との因果関係を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験参加者を募る際は統計的に必要十分な数に絞り、謝金経費の節減に成功したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の消耗品購入や人件費などに充て、研究目的の遂行のために使用する。
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