研究課題/領域番号 |
26700012
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
和田 真 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (20407331)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マウス / 身体性 / 多感覚統合 / 免疫染色 / 自閉症モデル動物 |
研究実績の概要 |
応募者らが発見したマウスのラバーハンド錯覚様現象を発達障害モデルマウスの行動評価に応用することで、発達障害に特徴的な身体像の障害が、発達障害モデルマウスでも生じているかを明らかにする。さらに、体温等の生体計測、c-Fosイメージング(免疫染色)を用いて、身体像の錯覚と障害に関与する脳の領域と神経回路を明らかにする。 平成26年度は、複数の行動実験で、マウスの身体像錯覚の性状を明らかにすると共に、刺激の自動化に取り組んだ。マウスのラバーハンド錯覚様現象は、マウスの尾と模造品の尾(ラバーテイル)を同期して筆刺激することで生じる(IMRF学会で発表)。この時、不透明な衝立でラバーテイルを覆うと応答は減弱した(日本神経学大会で発表)。さらに2本のラバーテイルを左右に配置して、一方のラバーテイルとマウスの尾を同期して刺激した場合には、同期刺激した側のラバーテイルを把持した時に有意に大きな応答が生じることを発見した(日本動物心理学会で発表)。つまり、この錯覚は、ヒトのラバーハンド錯覚同様に、視覚と触覚の相互作用によって生じており、刺激部位に対する空間的な依存性を持つことが明らかになった。さらに、刺激の自動化に取り組み、PC制御のもと、筆の同期・非同期刺激を行うことができる装置を開発した。5匹のマウスに対して、この装置を用いた実験を行い、手に持った筆を用いた実験と同様に、同期刺激の時に、ラバーハンド錯覚様応答が生じることを明らかにした(一部を日本神経科学大会で発表)。平成26年度には、これらの成果を取りまとめて、学会発表するとともに、現在、論文投稿の準備を進めている。また、尾部の温度計測等にも取り組むと共に、下半期には、計画を前倒して、自閉症モデルマウス(CAPS2 KO)を用いた行動実験や、即時遺伝子c-FosやArcに対する免疫染色を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、複数の行動実験を行い、マウスのラバーハンド錯覚様現象の性状を明らかにし、尾刺激の自動化にも成功した。生体計測については、ラバーハンド錯覚様と密接な関連を示す所見は得られていないが、ヒトの知見を明確にする必要がある。一方で、自閉症モデルマウスを用いた実験や、免疫染色については、計画を前倒して実施しており、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、マウスのラバーハンド錯覚様現象の詳細を明らかにし、発達障害モデル動物等での変化を調べていく。発達障害モデルマウスにおける身体性の変化を評価するのに有効な課題であることを示すには、ヒトのラバーハンド錯覚現象との比較を行い、相同の現象であることを示す必要がある。そこで、同一の実験装置を用いて、ヒトでも同様の実験を行い、知見を集めて比較する。さらに、海外研究者の研究により、ヒトのラバーハンド錯覚では、筆の刺激速度や性状も重要であるという知見が明らかになったため、マウスの実験においても、これらの要因にも注意を払いながら研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、モーターステージ付き顕微鏡(約850万円)を購入して、切片画像の取り込みに使用する計画であったが、切片画像の取り込みを外部委託することで、作業の効率化を図った。従って、切片画像等の取り込みの経費はその都度かかることになったため、基金の次年度使用が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降は、発達障害モデルマウスでの行動実験や、即時遺伝子(c-Fos, Arc)に対する免疫染色とその解析に注力する。当初の購入予定だったモーターステージ付き顕微鏡の代わりに、同様の機器を用いた切片画像の取り込み等の業務委託に160万円を予定している。触覚刺激発生装置(60万円)を制御するための実験制御・解析用の計算機(30万円)を購入する。さらにデータ解析用のソフトウェア(MATLAB, 70万円)を導入して、行動データや染色画像を効率よく解析する。組織切片作成やデータ解析のための技術補助員(2名, 計200万円)を雇用する。
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