研究実績の概要 |
新たに発見したマウスのラバーハンド錯覚様現象(Wada et al., 2016 J Neurosci)を発達障害モデルマウスの行動評価に応用することで、発達障害に特徴的な身体像の障害が、発達障害モデルマウスでも生じるか否かを明らかにし、さらにc-Fosイメージング(免疫染色)を用いて、身体像の錯覚と障害に関する神経基盤の解明を目指す。 平成28年度には、平成27年度に引き続き、自閉症の発達障害モデル動物(CAPS2 KO)を用いた行動実験を行った。野生型マウスでは、身体像の錯覚が再現するのに対して、自閉症モデルマウス(CAPS2 KO)では生じないことが明らかになった。追加の行動実験を含めた研究成果を北米神経科学学会、動物心理学会、日本生理学会にて発表するとともに、論文とりまとめの準備を進めた。さらに、活動依存性に発現するc-Fos, Arcを対象に免疫染色を用いた実験を行い、課題に関わる神経回路と、障害モデル動物での特徴を調査した。 一方、比較認知的な観点から、ヒトでも身体像の錯覚を評価し、自閉傾向や神経内分泌的な特性との関連を調査し、論文公表した(Ide & Wada, 2016; Ide & Wada, 2017)。さらに、自己の身体像だけでなく、他者の身体動作の知覚を評価するための実験も行った。マウスの動作を光点で表した視覚刺激(バイオロジカルモーション)を呈示したところ、マウスは、光点をスクランブルさせたコントロールの刺激と区別している可能性が示唆された(動物心理学会で発表)。 以上のように、発達障害者における身体像の障害の神経基盤を明らかにすることを目指して、比較認知的な観点もふまえた研究を推進した。
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