研究課題/領域番号 |
26700013
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
舩冨 卓哉 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (20452310)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | BRDF / 散乱光解析 / 位相関数 / 光線場 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,物体を取り巻く媒体中における光の空間分布を観測できるようになるチンダル現象を利用することで,どのような表面特性を持つ物体に対してもその幾何形状と反射特性(BRDF:双方向反射率分布関数)を同時に計測することを目的とする. 観測対象の幾何形状とBRDFを獲得するため,チンダル現象下で物体にレーザ光を照射した様子を観測し,物体を取り巻く媒体中における光線場を再構成する.平成27年度までの取り組みを通し,物体に照射する光源としてレーザ光源を用いた場合,その偏光と散乱媒体が持つ物理的な性質(散乱光の位相関数)によって散乱光の強度が観測方向によって変化するため,通常のトモグラフィ法を適用しても媒体中の光線場を正確に推定することができないことが判明した. これを受けて平成28年度は,散乱光の位相関数の計測を実施した.散乱の位相関数はHenyey-Greenstein関数によってモデル化されることが多いため,このモデルに従って実測値からパラメータを推定することを行った. また,時間的に散乱現象が安定している媒質として,これまでの液体に限らず,エアロゲルの利用可能性について検討したが,現在のところ利用は困難であると考えている.さらに,偏光の影響を避けることを目的として,レーザ光の代わりにLEDプロジェクタの利用も検討し,現在装置への組み込みに取り組んでいる. また,シミュレーションにより,大量の観測からBRDFを推定する手法についての検討を同時に進めた.当初,大量の観測から三次元光線場を推定し,そこからBRDFを推定するアプローチを予定していたが,散乱光の位相関数などによる影響も含めてBRDFと観測画像の関係を直接モデル化し,観測画像群からBRDFを直接推定する手法を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では実環境での計測がもう少し進んでいる予定であったが,光源が持つ偏光の影響や媒体が持つ散乱特性の影響により,観測画像の解析が困難であることが平成27年度に明らかになった.平成28年度の取り組みを通して,状況は改善されているものの,まだ完全な解決には至っていない.一方で,シミュレーションによる検証も同時に進め,少数の観測からBRDFを推定することができるよう,BRDFと観測画像の間にある関係のモデル化には進展があった.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるが,引き続き実環境計測を実現するための装置の開発に取り組むと同時に,シミュレーションによる現象の解析を進める.実環境での計測結果とシミュレーションには乖離があることが予想されるため,これらの突合せをできるだけ早い段階で実現し,課題を遂行する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は最終年度にあたるため,当初は情報収集や成果発表のための旅費,及び論文投稿に係る費用のみを計上していた. しかし,光源が持つ偏光や媒体が持つ散乱特性の影響が実環境計測を実現する上での障壁となっており,これらを軽減・解決するための装置の開発に時間がかかることが平成28年度の始めから見込まれていた.それに係る経費を確保するため,計画的に支出額を抑えた.
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次年度使用額の使用計画 |
光源が持つ偏光や媒体が持つ散乱特性の影響を軽減・解決するための装置の開発に次年度も取り組む予定であり,それに係る光学部品や機材等の購入,及び研究補助者の雇用に支出する.
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