本研究課題では,物体を取り巻く媒体中における光の空間分布を観測できるようになるチンダル現象を利用することで,どのような表面特性を持つ物体に対してもその幾何形状と反射特性を同時に計測することを目的とする.観測対象の幾何形状とBRDFを獲得するため,チンダル現象下で物体にレーザ光を照射した様子を観測し,物体を取り巻く媒体中における光線場を再構成する. 最終年度であった平成29年度は,(D)気体中の光線場推定に必要な装置開発を行い,精度評価を行った.まず,解析において肝要となる散乱特性の計測として,平成28年度に取り組んだ散乱位相関数の計測を発展させ,1枚の画像からノンパラメトリックに散乱位相関数を推定する手法を開発した.また,平成28年度までの取り組みを通して,(A)散乱特性が時間的に安定している液体を用いた場合には,(B)光線場を観測した際,偏光や映り込みなどの影響が大きく解析の障害となる問題があったが,気体を用いた場合にはその問題が起こらず,光線場の再構成およびBRDFの推定が実現できることを,シミュレーションと実機を用いた実験のそれぞれで確かめた.一方,散乱特性が時間経過とともに変化していくが,これについては散乱特性を計測するカメラを別途設置することで対処した.これにより,物体にレーザ光を照射した様子を観測し,その光線の到達位置(幾何形状)と反射光の空間分布(BRDF)を同時に獲得することができた.本成果については現在発表準備中である. 他にも,平成28年度に利用可能性を検討したエアロゲルについて,検討に協力いただいた研究者と協働し,その物性を計測し,共同で論文を執筆することができた.また,本課題を通して開発した光線場の解析技術を他の応用へ発展させた技術の開発,少数の観測からBRDFを復元する最新の手法を発展させた技術の開発についても取り組み,成果を上げることができた.
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