研究課題/領域番号 |
26700022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野沢 峻一 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (80707620)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知能ロボティックス / ヒューマノイドロボット / 道具環境利用行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヒューマノイドが脚立を運び登る,箒を用意してゴミを掃くような,道具・環境・身体の関係性が変化する行動の計画法・動作獲得法を明らかにすることである.そのため本年度は,a)異なる利用形態の道具環境利用予備実験,b)外界センサ検討と動作制御器への適用,c)衣服型外装着用動作の実現について,研究を遂行した.また手法の一般性に留意し脚型・全身型の複数種のヒューマノイドを用い検証した. a)利用形態の異なる道具環境利用行動の予備実験を行い,行動計画・動作獲得に要する機能を見積った.行動例は,道具を身体化する行動(手先で扱う道具操作,車・自転車の運転等),道具を環境化する行動(梯子上り等),環境操作行動(ドア・バルブ等の環境固定対象操作),道具運搬行動の4種を扱うよう動作制御・行動計画系を拡張し,利用形態変化を含まない道具環境利用行動を実現した. b)これまではヒューマノイドが水平面上で自立し道具操作する動作制御器を構築してきた.本年度はこれを発展させ凹凸のある未知環境や搭乗型道具も扱うことを狙い,外界センサのヒューマノイドへの適用を行い動作制御器開発を行った.具体的には,力覚センサ(分布型・集中型)による手先足先反力計測,姿勢覚センサによる姿勢計測を動作制御に適用し,画像点群センサによる道具環境認識を行動計画に適用した.これにより,凹凸のある未知不整地の認識・移動できることを確認し,関節負荷・バランスを調節し自転車のような搭乗型道具を運転する動作が実現可能であることを実験的に示した. c)着脱可能道具利用の検討として,衣服型外装着用動作を扱った.衣服着用時のヒューマノイドが受ける力覚センサ信号への影響を検証し,衣服着用に起因する信号オフセットの除去法を提案した.また防水外装を利用し,水中のような抵抗・浮力を受ける環境中でもバランス維持し歩行可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究開発項目は,概ね順調に親展していると考えている.具体的には,当初予定した項目のうち、1)複数ロボットへの動作制御プログラムの展開,2)環境化道具利用行動へ展開するための,不整地・水中等を含む足場の不安定な環境での動作・搭乗型道具利用動作の検討の開始,3)利用形態の異なる道具環境利用行動の個別実現,4)姿勢覚センサ・視覚センサの動作への統合,5)衣服型外装の検討とロボット行動への適用などを進められたためである. 一方,着脱機構を備えるハードウェア製作等は現在検討段階であり,次年度以降で引き続き検討とヒューマノイドロボットの行動への適用を行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
今後も概ね各年度予定した項目に基づき,研究を遂行していく. 推進方策の変更点としては,センサ利用行動のソフトウェア開発を前倒しし,着衣外装・着脱機構・センサ搭載等のハードウェア開発をより時間をかけて検討することとした.具体的には,当初計画ではH26年度で力覚センサ,H27年度で視覚センサの利用・機構・外装開発と分けていたが,H26年度中に力覚・視覚・姿勢覚センサの利用ソフトウェアを開発し,どのようなセンサ開発・着脱機構・およびその利用行動を扱っていくか,明確化し検討することとした. そのため,H27年度以降着脱機構・外装・センサ搭載等ハードウェア開発項目に適宜必要な時間をさき,道具環境利用行動への適用を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,1)本年度予定していた,より多様な道具環境利用行動のための ヒューマノイドロボット改造が内容・納期等再度検討が必要と判明した,2)先行して力覚・視覚センサを利用するソフトウェア開発が進めることができ,今後のハードウェア開発の指針を得られる体制ができた,3)着脱可能なセンサ・機構・外装等は力覚・視覚センサの利用状況から時間をかけて検討をすることとした,などの要因により,着脱可能機構・センサ・外装の検討により今後より時間をかけて遂行していく予定となったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降では,主に上記理由の1),3)を含めた着脱機構・外装・センサの開発およびヒューマノイドロボット改造に焦点を当て研究費を適切に使用し,円滑に研究を遂行する予定である.
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備考 |
本研究では研究成果を論文発表だけでなく、ロボットの動作行動制御ソフトウェア群もオープンソースソフトウェアとして公開している。 (1)-(4)はロボットの実時間動作・行動制御のため、および視覚認識系との統合を行うための基盤ソフトウェア群である。(5)はそれらを利用した、実際の道具環境利用行動プログラム群である。(3)以外は所属研究室の、(3)は産業技術総合研究所が開発するリポジトリを利用している。
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