研究課題/領域番号 |
26700025
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池本 周平 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00588353)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物規範 / 筋骨格ロボット / 空気圧人工筋 |
研究実績の概要 |
本研究では,ヒトの固有受容器に相当するセンサを搭載した筋骨格ロボットアームを開発し,ヒトの骨格筋に見られる反射について,ロボティクスの視点からの機能解明と応用を目指している. 平成27年度の主要な研究の成果は,ヒトの固有受容器として筋紡錘とゴルジ腱器官に注目し,その機能を模倣した非常にコンパクトなセンサシステムを開発したことである.開発したセンサシステムは,本研究で筋骨格ロボットアームのための人工筋肉として使用する空気圧人工筋の特徴を活かし,その端部に簡単に取り付けることができる.また,センサの読み取りに必要な増幅器,ヒトの固有受容器にみられる特性の変化を模倣するための通信機能などをもたせた回路基板についてもコンパクトに実現し,空気圧人工金の収縮量や取り付けの自由度を損なうこと無く,各空気圧人工筋の端部に取り付けることができる.この成果は,国際会議で発表を行い,現在,論文化を進めている他,本年度に開催される国内会議でも,その応用についての発表を行う予定である. また,平成26年度の成果であるヒトの肩複合体の機能を再現できるリンク機構について,平成27年度に開催された国際会議(IROS2016)で発表を行った他,当該分野の主要な論文誌であるBioinspiration & Biomimeticsに論文が掲載された. 本年度に開発されたセンサ,および本年度発表した肩複合体のリンク機構は,当初より,本研究計画の遂行において主要な問題として挙げており,本成果によって平成28年度の研究計画の円滑な遂行が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,平成27年度までに筋骨格ロボットアームの試作を終え,平成28年度にその改良と,ヒトの反射を生む神経回路を模した制御系の実装・評価を行うこととしていた.その一方,本年度に開発したヒトの固有受容器を模したセンサシステムについては,技術的な困難が多いと予想していたため,問題が生じた場合,平成28年度に筋骨格ロボットアームの開発をずらすとともに,その機構を簡単化することとしていた.現在,センサシステムについては計画通りに開発を終えているが,それを用いた筋骨格ロボットアームの試作は達成できていない.しかし,平成26年度において,筋骨格ロボットアームの機構の内,最も複雑な肩の構造について一定の成果が得られていることから,平成28年度に開発する筋骨格ロボットアームは,機構を簡単化することなく,計画通りに開発・評価することができると考えられる.以上のことから,本研究計画は,(2)概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,肩複合体リンク機構や固有受容器に相当するセンサなど,これまでに得られた成果を統合し,筋骨格ロボットアームを開発し,ヒトの脊髄反射を生む神経回路を模した制御則の実装・評価を行うことを目指す.現在,その予備実験として,非常に単純な1自由度拮抗筋駆動のロボットアームに開発したセンサを搭載し,ヒトの脊髄反射の神経回路を真似ることで,伸張反射,相互抑制や共収縮などといった特徴的な筋活動をロボットで再現する試みを行っており,成果が得られ始めている.そこで,平成28年度は,当初の目的である筋骨格ロボットアームの開発を進めると同時に,この単純な1自由度拮抗筋駆動ロボットアームをテストベッドとしてヒトの脊髄反射の神経回路を模した制御則の研究を進め,それらの成果を統合することで平成28年度中の円滑な目的達成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
筋骨格ロボットアームに必要な肩複合体リンク機構や,固有受容器センサの開発を終えたが,それらを複数搭載した筋骨格ロボットアームそのものの開発が完了しておらず,次年度も引き続き開発を行うため,その開発費用として次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
筋骨格ロボットアーム開発のための機械・電子部品の調達など,主に物品費として使用することを計画している.また,対外発表に値する成果が得られた際には,論文校正や学会参加のための旅費としても使用する可能性がある.人件費・謝金としては使用計画はない.
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