研究課題/領域番号 |
26700026
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
仲田 佳弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80720664)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リニア電磁アクチュエータ / リニアバーニアモータ / ヒューマノイドロボット / 力制御 |
研究実績の概要 |
本研究は,コイルに励磁する電流を制御することで外力に対する粘弾性を調整可能な小型・高出力の電磁アクチュエータ「リニアバーニアモータ」を駆動源とした,柔軟な体幹を有する人型上半身ロボットの開発と制御に関するものである.リニアバーニアモータを複数搭載したロボットを用い,体幹からエンドエフェクタにかけての各アクチュエータを順に連携して駆動させ,エンドエフェクタのダイナミックな動作を引き出す運動連鎖の効果により,全身の身体協調運動を実現する.運動連鎖の効果を利用するには,自ら駆動するだけでなく,脱力して他のアクチュエータの動作に対して受動的に動く必要があり,バックドライバビリティを有する本アクチュエータは適した特性を持つ. 今年度は,制御回路に必要なセンサ回路を追加し,製作した回路上でテスト用の3相モータの電流制御を行っておき,その目標値をコンピュータから与えることでモータ出力が変化できることを確認した. リニアバーニアモータの製作・駆動システムの開発と並行し,運動連鎖を利用したロボット動作に関する検討を行った.この実験では,システムの構築が容易で,リニアバーニアモータと同形状の空気圧シリンダを用いた.駆動に流体を用いる空気圧シリンダの特性を利用し,運動連鎖における力の伝達を,空気室同士をチューブで連結することによって実現した(連動連結メカニズム).上半身ロボットを開発し,搭載したシリンダ間の連結を切り替えられるようにした.これを用いて,投球・捕球の動作が連結の仕方によっての変化することを確認し,この結果を国際会議にて発表した.また,柔軟な体幹を持つロボットとして,背骨のような多段のリンクメカニズムを持つロボットの試作を行った.さらに,連結連動メカニズムの応用として下肢の動作にも適用し,環境ごとに適した連結構造が存在することを確認し,この成果を国際会議および英語論文誌にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
可動部・固定部間の磁気吸引力による組み立ての難しさ,コイル配線の困難さなどの課題により,リニアバーニアモータの製作が遅れたことで,人型上半身ロボットの開発および複数のアクチュエータを同時に制御するシステムの開発の計画が影響を受け,全体としてスケジュールに遅れが生じている.一方で,運動連鎖を利用したロボットの動作について,同じ直動アクチュエータである空気圧シリンダを活用することで検討を行うことができた.特に,空気室同士をチューブで連結することにより力を伝達することで,2つの関節間でのエネルギー伝達を実現する生物の二関節筋のような構造を作る連結連動メカニズムを利用した研究により,国際学会での発表や,海外論文誌での研究成果報告など成果を残すことができた.また,柔軟な体幹の構造に関する検討を行い,この成果を国際学会にて発表した.リニアバーニアモータで駆動する人型上半身ロボットの開発および実験は,平成29年度に軸数を制限して達成する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には,複数のリニアバーニアモータで駆動する人型上半身ロボットおよび制御システムを完成させ,実験と評価を行う.モータの駆動回路をコンピュータから制御するシステムは開発および動作確認が完了しているため,ロボット駆動に必要な数の回路を同時に駆動できるように拡張する.なお,運動連鎖を利用した動作の確認および実験評価までを短期間で実施するため,ロボットに利用するリニアバーニアモータの数を制限する.具体的には,片腕での実験を最初に行う.この条件での実験評価を達成し,その後,軸数を増やしていくことを検討する.このような拡張を短期間で行えるようにするため,ロボットの関節機構を共通化(ユニット化)し,追加と取り外しを容易に行えるようにする予定である.さらに,成果をまとめて学術論文として投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
リニアバーニアモータの製作において固定子-可動子間の磁気吸引力による組み立ての難しさという製作上の問題があり,短時間で数多く製作することが困難であったことにより,全体の計画に遅れがあった.また,個々のモータを駆動するためのモータドライバ基板は完成しているものの,複数同時制御のシステム開発に遅れがあったため研究費に次年度未使用額が生じたが,平成29年度には,複数のリニアバーニアモータで駆動するロボットの評価実験を実施し,評価を行う.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には,リニアバーニアモータで駆動する人型上半身ロボットおよびリニアバーニアモータの複数同時制御システムを完成させ,実験および評価を行う予定である.なお,ロボットは駆動軸数を減らす.研究費は,ロボットの構造部材に加え,故障や材料の摩耗が発生したときの修繕用の材料費として使用する.また,ロボットの開発と実験についてまとめ,論文投稿を行う予定であり,そのための費用として使用する.
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