本研究は,コイルに励磁する電流を制御することで外力に対する粘弾性を調整可能な小型・高出力の電磁アクチュエータ「リニアバーニアモータ」を駆動源とした柔軟な体幹を有する人型上半身ロボットの開発と制御に関するものである.リニアバーニアモータを複数搭載したロボットを用い,体幹からエンドエフェクタにかけての各アクチュエータを順に連携して駆動させ,エンドエフェクタのダイナミックな動作を引き出す運動連鎖の効果により,全身の身体協調運動を実現する.運動連鎖の効果の利用には,自ら駆動するだけでなく,脱力して他のアクチュエータの動作に対して受動的に動く必要があり,バックドライバビリティを有する本アクチュエータは適した特性を持つ. 今年度は,これまでの研究結果をもとに、リニアバーニアモータ駆動の1段のパラレルリンク構造による体幹と双腕を有する上半身ロボットの設計を行った.体幹部は6本のアクチュエータによって駆動され,3軸の並進・回転動作が可能である.軽量化のため,腕部はアクチュエータ自体がリンクの一部となるような構造とした.この設計を元に,実際にロボットの試作を行った.また,さらに他自由度のロボット実現を目指し,電磁アクチュエータの高出力化の検討を行った.高出力化が達成できれば,ロボットの動作特性の改善も期待できる.リニアバーニアモータと同様に多数の磁極を有する構造を持ち,非接触に動力伝達が可能な磁気式動力伝達機構(磁気ねじ)に着目した.リニアバーニアモータに使用した埋込磁石型の構造を採用することで,従来の磁気ねじに比較して簡易な構造を提案し,試作によって実際に駆動できることを確認した.本技術はその革新性を評価され,JSTの外国出願支援に採択されPCT出願を行っている.制御については力センサを用いない力推定・制御手法を提案し,国内研究会で発表した.国際会議でも成果を報告することが確定している.
|