研究課題
本計画では、能登半島先端の大気観測施設において、エアロゾルの連続観測を行い、その季節変化や増加要因を正確に把握し、雲核としての活性化能も含めた粒子の物理化学的特性を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、特に分析電子顕微鏡を用いた個別粒子分析を行い、エアロゾルの粒子サイズごとの混合状態を明らかにした。硫酸塩の周りを有機物がコーティングしている粒子が多く見つかり、特に有機物の含有量は粒径が小さくなるほど増える傾向が顕著に見られた。この個別粒子分析によって明らかになった混合状態と、物理的な連続観測から得られた雲核活性の間には良い対応関係が見られ、粒径の小さい粒子ほど有機物の含有率が高く、雲核活性が小さいことが明らかになった。また、平成28年度以降に計画していた、同位体分析によるエアロゾル試料中炭素質成分の発生源推定について、前年度から順次ストックされたフィルター1年間分の分析を前倒しで終了することができた。この結果、化石燃料起源、植生起源の相対的な発生源寄与率に明瞭な季節変化が存在することが明らかになった。その他、大陸の森林火災やバイオマスバーニングなどの影響が、少なからず風下地域のエアロゾルの増加要因となっており、さらには雲核としての活性に変化をもたらしていることもわかった。これらの成果についてはAACやASAAQなどの国際会議を始めとする学会で発表したほか、国際科学雑誌での投稿に向け準備中である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画以上に進展している根拠として、平成28年度以降に計画していたエアロゾルフィルターサンプルの炭素同位体分析が1年間分前倒しで完了し、これまでの成果についてまとめの作業に取り掛かかっていることが挙げられる。
炭素同位体分析など、一部計画を前倒しで進めることができたため、来年度以降は重金属の同位体分析結果によるエアロゾルの起源推定、ならびに分析電子顕微鏡以外の手法を用いた個別粒子の化学組成や物性の評価に一層注力する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 14件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Aerosol and Air Quality Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi: 10.4209/aaqr.2015.09.0545
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Journal of Cleaner Production
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