研究課題
本計画では、能登半島先端の大気観測施設において、エアロゾルの連続観測を行い、その季節変化や増加要因を正確に把握し、雲核としての活性化能も含めた粒子の物理化学的特性を明らかにすることを目的としている。本計画は能登での観測を通じ、世界11カ所の大気観測拠点で集められたエアロゾル(雲凝結核)観測データの国際比較研究(のべ14カ国、23研究機関、70名余の研究者が関与)の一旦を担っており、昨年度までに、国際データベースを通じた長期観測結果の公開およびデータ論文化が完了していた。平成29年度には、その解析結果に基づいた科学論文が国際誌Atmospheric Chemistry and Physics誌に国際共著論文として掲載された。昨年度までに、フィルター上に採取されたエアロゾルの同位体組成の分析を完了しており、その解析結果から明らかになった大陸におけるバイオマスバーニング等の影響とその寄与、季節的特徴について、AAAR(The American Association for Aerosol Research)の年会で報告した。また、同期間におけるエアロゾルの雲核活性への影響評価を行い、バイオマスバーニングの影響下では顕著な微小エアロゾル濃度(≒雲凝結核)と有機物の寄与割合の増加が確認された。その結果はAOGS2017(Asia Oceania Geosciences Society)等国内外の学会を通じ発表している。以上の成果については国際誌に投稿準備中である。本計画を通じて得られた長期間にわたる直接観測結果は、今後、数値シミュレーションやリモートセンシング観測結果の検証に役立ち、当該地域におけるエアロゾル雲凝結特性の体系的な理解に向けた大きな貢献が期待される。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題のひとつである国際データベースへの貢献に関しては、具体的な進捗として国際共著論文を発表することができた。また平成29年度は本計画の最終年度にあたることから、期間を通じて得られた成果のとりまとめに重点を置いたが、複数の国際学会で発表し、論文化も進行中であることから、おおむね期待通りに計画が推移したと判断できる。
計画期間終了後も、能登における各種エアロゾル観測装置による観測体制の維持発展に努め、東アジアの大気環境の変遷を追うべく長期的な研究を継続する。また、本計画を足掛かりに、さらなる国際連携プロジェクトへの参画を通じて国際的なエアロゾル観測ネットワークの構築に貢献する。
補助事業期間を延長する理由として、大気中微粒子に含まれる有機物マーカーの分析結果を再解析したところ、当初の想定に反し、正確な濃度計算ができていない可能性が生じたため、再確認および目的の精緻化のために分析対象機関を当初の2カ月分から一年分に拡大したうえで、追加の試料分析、濃度計算のを行う必要が生じたため。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 15件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 18 ページ: 2853~2881
10.5194/acp-18-2853-2018
巻: 18 ページ: 1785~1804
10.5194/acp-18-1785-2018
Aerosol and Air Quality Research
巻: 17 ページ: 3194~3208
10.4209/aaqr.2017.01.0020
http://actris.nilu.no/Content/?pageid=226809f7a0ac49538914eeafb4448afa
http://www.ki-net.kanazawa-u.ac.jp/db/atmosphere/