研究課題
富士北麓のカラマツ林、山城試験地の温帯混合林、天塩研究林の幼齢カラマツ林において微気象学的手法及びチャンバー法によるメタンフラックスを通年に渡って連続観測し、ほぼ無欠測の高品質なデータを取得した。アラスカ・湿生クロトウヒ林においては、生育期間について渦相関法によりメタンフラックスを連続観測した。微気象学的手法による計測法の高精度化のため美唄湿原において渦相関法によるメタンフラックスの集中観測を実施し、補正法等のデータ処理法について検討するための高品質なデータを得た。夏季に複数回、富士北麓のカラマツ林、天塩研究林の幼齢カラマツ林、アラスカ・湿地林に滞在し、観測機器の保守を行った。山城試験地には月2回程度の頻度で、メンテナンス及び更なる高精度化を目指したシステムの改良を行った。富士北麓のカラマツ林のチャンバー法と微気象学的手法によるメタン吸収量は良い一致を示し、異なる手法において比較可能なメタンフラックスが精度良く計測が出来ていることが確認でき、成果を国際誌に掲載させた。一方、山城試験地の混合林、天塩研究林の幼齢カラマツ林では、両手法により観測されたメタンフラックスは大きく異なることが明らかとなった。この原因として、両森林サイトでは、富士北麓のカラマツ林と比べて地表面が非一様であるため、チャンバー法による計測が群落スケールのメタンフラックスを代表できていない可能性があげられる。
2: おおむね順調に進展している
観測システムや分析計に大きなトラブルもなく、順調に観測が出来ている。山城試験地、天塩研究林のサイトでは、双曲線簡易渦集積法による計測結果に2割程度の過小評価が見積もられているため、今後、過小評価を改善させるための改良が必要である。富士北麓に設置された機器のうちの一部は、経年劣化が生じているため次年度に更新する必要があると考える。上記のような問題が挙げられるものの、ほぼ無欠測の観測データが連続的に取得されており、今後の解析のためのデータは順調に取得されていると考える。
次年度以降も、森林4サイトにおいて継続的な観測を実施し、長期無欠測の連続データを取得する。双曲線簡易渦集積法によるメタンフラックスのクロスチェックのため、既に観測されている鉛直濃度プロファイルを使って改良傾度法よる群落スケールのメタンフラックスを計算する。複数の手法の比較観測によりどの程度の不確実性を有しているかを定量評価する。アラスカ・湿地林では土壌の乾湿によってメタン発生量が異なることが分かったため、それを定量評価するためのチャンバーシステムを自作し、生育期間にわたってチャンバー法によるメタンフラックスの観測を行う。昨年度、試験的に実施した美唄湿原における渦相関法を用いたメタンフラックスの観測では、森林のメタン吸収・発生量と比べて1桁以上大きな放出量が観測され、森林のメタンフラックスを理解するうえでも有益なデータを得ることが出来た。そこで、本年度は生育期間にわたって美唄湿原でメタンフラックスの観測を行う。
機器の耐久性が当初の予定よりも優れていたため、観測機器の劣化にともなう補修費・メンテナンス費用が節約できたため、差額が発生した。ただし、長期連続観測による機器の劣化は進行しているため、繰り越されたメンテナンス費用は次年度の補修費に利用される予定である。
ポンプやコンプレッサーなどの劣化が生じている機器の修繕・取替えにかかる費用に使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Agricultural and Forest Meteorology
巻: 213 ページ: 1-9
10.1016/j.agrformet.2015.05.004
巻: 214-215 ページ: 157-168
10.1016/j.agrformet.2015.08.252
http://atmenv.envi.osakafu-u.ac.jp/research/research_ch4_flux/