研究課題
分裂期のDNA二重鎖切断(DSB)は、高度な染色体凝縮のため、修復されにくいことが知られており、これが分裂期の放射線高感受性の主要因であると考えられている。近年、ショウジョウバエではBubR1依存的に染色体断片を元の染色体に係留するDNA tether構造が発達しており、分裂期染色体の微細構造がゲノム安定化を担うことが示唆された。本研究では、ヒト細胞におけるDNA tether構造のダイナミクスと分子構築を明らかにして、放射線による染色体断片化を防ぐ機構の解明を目的としている。平成28年度には、ヒト培養細胞(iPS細胞)を用いた形態学的解析より、放射線照射後の分裂期におけるBubR1はDNA損傷部位に集積することはなく、動原体に局在することを明らかにした。BubR1遺伝子の欠損症であるPCS症候群患者由来iPS細胞の樹立、ゲノム編集法を利用してBubR1完全欠失HCT116細胞の作製を行った。ヒトBubR1欠損細胞は、放射線致死感受性を示さなかったが、放射線照射後に微小核や二動原体染色体・環状染色体といった不安定型染色体の形成が有意に亢進していた。次に、これらの放射線による染色体不安定性がBubR1の主要機能である紡錘体形成チェックポイントの破綻に起因するかをタイムラプスイメージング観察で検討した。正常細胞でもDSB損傷を加えた染色体も紡錘体形成チェックポイントを通過することから、BubR1欠損による不安定型染色体の蓄積は紡錘体形成チェックポイントに依存しないことが示された。これらのことから、ヒト細胞における放射線抵抗性におけるBubR1の新たな分子機能の存在が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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