研究課題
芳香環を有し、かつ、ハロゲン(塩素や臭素)と結合している有機化合物(以下、有機ハロゲン化合物と略)は、共通してダイオキシン類様の毒性を発現することが明らかになり、実効的対策のために、その生成機構解明が求められている。本研究では、熱プロセスに係る不均一固相を対象とし、そこでの有機ハロゲン化合物の生成機構解明を目的とする。2014年度の研究成果および進捗状況は以下である。その場(in situ)観察測定系を構築し、化学形態分析を実施した。結果、都市ごみ焼却飛灰中銅の化学形態が、気相中抑制ガスといわれている二酸化硫黄と熱化学的相互作用を通じて有機塩素化合物(ダイオキシン類、PCB類、クロロベンゼン類)の生成に強く影響していることを示した。本成果はEnviron. Sci. Technol.誌に受理・掲載された。ベトナム、フィリピンで採取した廃電気・電子製品野焼き土壌中の有機塩素化合物および重金属類を定量した結果、人為的かつ重篤な汚染・濃縮状況が明らかとなった。総有機塩素濃度に占めるダイオキシン類、PCB類、クロロベンゼン類の総濃度(塩素換算)は0.1%未満であり、99.9%以上の未同定塩素化合物が存在することが示された。本成果は国際学会(Dioxin 2014)にて発表した。ガーナで採取した野焼き土壌を対象とし、有機ハロゲン化合物の生成に対する重金属類(銅、鉛、亜鉛)および臭素の影響を、化学形態分析および統計的解析の複合的側面から評価し、各ハロゲン化合物に寄与する特異的な元素や化学形態を同定することに成功した。本成果は現在、査読付き英語論文誌に投稿中である。生成機構研究をベースとして、抑制剤の機構研究も推進した。その結果、尿素、チオ尿素、キレート剤による抑制機構に関して、化学形態に基づいた知見も得た。一部成果を国際学会(Dioxin 2014)にて発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
2014年度に計画したその場(in situ)観察測定系の構築を推進させた。その系構築・準備に留まらず、in situ X線吸収微細構造法による化学形態分析を実施した。結果、都市ごみ焼却飛灰の模擬実験系における固相-気相の熱化学的相互作用を動的に捉えることに成功し、本知見はEnviron. Sci. Technol.誌に受理・掲載された。また、2015年度以降で計画していた総有機塩素濃度の測定系を導入し、途上国野焼き土壌に対して未同定有機塩素化合物の存在割合に関する新知見を得た。加えて、野焼き土壌中の有機ハロゲン化合物に対する重金属や臭素の影響を、化学形態および統計分析の観点から説明し得ることを示し、現在成果を論文投稿中である。生成機構研究の知見をベースとし、抑制機構に関する研究にも着手し、発展的な知見も得ている。要約すると、2014年度計画は想定以上の成果を得られ、かつ、2015年度以降の計画についても先行的な知見・成果を得られた。加えて、発展的な抑制機構研究にも拡張しつつある。以上の理由により、「当初の計画以上に進展している」と考えられる。
計画以上の進展がみられるため、今後の研究推進も当初計画に基づき、上述した各成果の更に推進・発展させる。2015年度で主に計画している模擬試料を用いた反応場再現実験に関しては、ラボスケールの模擬野焼き実験系を現在構築中である。また、有機ハロゲン化合物の影響因子として、今後市場拡大が予想されている炭素ナノ材料(フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等)に着目した模擬ごみ焼却実験に関する初期的なラボ実験を進展させる。この他にもサブテーマを設け、包括的かつバランスのとれた研究推進を計画している。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件)
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