本研究は、低炭素社会と循環型社会の両立に向けたエネルギーシステムの設計を支援するための方法論の開発を目的とした。特に、様々な省エネ・創エネ製品が将来の社会でどの程度普及しうるのか、さらに、その普及がエネルギーシステムにどのような影響を及ぼしうるのかを分析した。このとき、エネルギーシステムを取り巻く将来社会の状況には様々な不確実性が存在するため、本研究では起こりうる将来社会の状況を複数のシナリオとして描写した。シナリオ作成を支援するためのシステムとして「物質・エネルギー連環シナリオシミュレータ」を開発した。このシステムを用いることにより、想定した将来社会の状況に応じたエネルギーシステムの変化を動的に評価することを目指した。 H28年度までに、省エネ製品普及モデルと製品ライフサイクルフローモデルからなる「省エネ・創エネ普及モデルを構築した。さらに、このモデルをライフサイクルシミュレータ上に実装することにより、個々の製品オブジェクトの状態変化を反映させたシミュレーションを可能とした。H29年度は、これまで研究室で開発してきた「持続可能社会シナリオシミュレータ(3Sシミュレータ)」と「省エネ・創エネ製品普及モデル」を統合化することにより、「物質・エネルギー連環シナリオシミュレータ」を開発した。ケーススタディでは、太陽光発電システム(PVシステム)を対象とした将来普及シナリオを作成し、開発したシステムの有効性を確認した。この成果を台湾で開催された国際会議EcoDesign 2017: 10th International Symposium on Environmentally Conscious Design and Inverse Manufacturingで発表し、研究代表者らの論文はBest Paper Awardに選ばれた計4本の論文のうちの1本として選ばれた。
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